ふと、超本気Curry・『俺のポークカレー』を作ろうと思い立った昼下がり。買い置きしておいた材料のうち、タマネギだけが足りなかったのでコンビニへ行くことにした。
21歳くらいだろうか。レジへカゴを差し出すと、バイトの女のコがちょうど仕事をあがるタイミングだった。
彼女は嫌な顔一つせずに対応しようとしてくれたのだが、「大丈夫よ、私やるから。お疲れさま」ともう一人のバイトのおばさまが彼女を送り出し、丁寧に応対してくださった。私は午後のおやつ・アメリカンドッグを温めて貰ってから店を出た。
すると数メートル先の交差点で、先程の女のコが信号待ちをしていた。バイト中穿いていたジーンズは華やかなワンピースに替わり、アップにまとめていた髪は下ろされていた。彼女は段の付いてしまったうしろ髪を気にしているようだった。
……というバイトの店員さんに道端で遭遇するという、Field of viewばりの『突然』のドキドキに、Complexや小沢健二、Classにたま、花花にプリプリ、といった懐メロシャッフルをBGMにCurryを煮込んだ。だから暫く、季節外れの『クリスマスキャロルの頃には』が頭を離れなかった。
にしてもやはり、音楽の『トリップ力』とも呼ぶべきチカラは凄いと思うし、憧れます。あの日あの時あのコと過ごした淡い想い出、或いは苦い想い出、笑ったコトに泣いたコト、そういったセツナアルバムが高速怒濤、パラパラパラっとたちまちめくれて、センチメンタリズムがもんやり心に立ち込めます。
映画や小説にはあり得ない、瞬発と爆発に憧れまくりです。「いいなあ。ミュージシャン」とライブステージを観ては思うのです。嫉妬です。音楽は1秒で世界を変えられると思います。ですが、小説は1秒では一行も読めないでしょうし、映画の1秒は冠クレジットすら出てない場合がほとんどでしょう。そういう意味で、時間差のないエネルギーはビッグバン並みの威力です。
そういう意味で皆さん、ロックをたくさん、できれば日本語ロックをたくさん聴こうじゃありませんか。考える前に肩を組んで、全身で皆さん、皆さん全員でロックを聴こうじゃありませんか。
と若干サンボマスター・山口さんの口調になっているのは、次の秋クールに監督するドラマでサンボマスターの曲を使わせて頂くシーンがあるからだと思われます。
バナナマン日村さん主演、TBS系ドラマNEO『イロドリヒムラ』の第3話、監督&脚本を担当させて頂きます。
飯塚健(いいづか けん)
1979生まれ。映画監督。脚本家。小説家。主な作品に、『Summer Nude』、『荒川アンダーザブリッジ』(ドラマ・映画共に)、『REPLAY&DESTROY』、『FUNNY BUNNY』(舞台)などがある。