映画監督 飯塚健の「日々散々」

2012年08月01日 更新
第1回 『3連チャン』
2週間ほど前から、たとえばSNSのニュースフィードで、或いは打ち合わせで会ったプロデューサーから、はたまた風の噂で、『田中さんが引っ越したらしいぜ』という情報が我らがコミューンを飛び交うようになった。

田中さんとは“癒し系”録音技師で、『荒川アンダーザブリッジ』の現場でもお世話になったナイスミドルだ。そんな田中さんが都心の真ん中に越したとのことで、「こりゃお祝いだ」「だな、お祝いだな」「イエス、お祝いしようぜ」とお祝いとは名ばかりの、単に集まって飲みたいだけ、という会の開催を促すメッセージが誰からともなく回るようになり、私もその流れに乗った。ふと思い立ったが吉日、田中さんと「飲もう感」が最も強そうな作曲家・海田さんを誘ってみたのだ。

がその日、田中さんはOKだが海田さんはNG、翌日は海田さんはOKだが田中さんはNG、という具合にスケジュールが微妙に合わず、どうするこうするとやり取りをした結果、翌々日なら私を含む3人ともOKということがわかったのだが、「どうせなら3連チャンでしょ!!」という田中さんの、何がどうせならなのか、よくわからない意見にまとまった。そしてその日は田中さんと私と妻、若き俳優部・林遣都くんと小林涼子ちゃんの5人で、翌日は海田さんと私、『サイタマノラッパー』の駒木根隆介くんの3人という、もはや「田中さんの引越祝い」とは何の関係もない感じで、そして翌々日は田中さんと私と妻、海田さんと照明技師・浩太さんの5人で、という若い頃以来、随分久々の「3連チャン飲み」を経験した。

が、ちょっと待ちなさい。「どうせなら3連チャンでしょ!!」とノリノリで言い放った田中さんはもちろん、「ですね、そうしちゃいましょ!!」とすかさず同意した海田さんにしても、「3連チャン」ではない。3連チャンなの、俺だけじゃねえか。……と最後の夜に肝臓の痛みと共に気付きました。

他にも、現場中じゃなければ駆け付けるのによお、と嘆いた面々も数知れずの我らがコミューン。そんなハートフルなスタッフ陣でつくった映画のDVDが間もなく発売されます。是非ご覧ください!!

こうして始まったこのゆるゆるコラム。連載コラムを持つなどという初めてのコトに少しドキドキしています。残金不明のSuicaでもって、改札を通る時と似たドキドキです。が、来週からもせっせと書こうと思っていますので、お付き合い頂けたら嬉しゅうございます。

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DVD情報

『荒川アンダーザブリッジ THE MOVIE スタンダードエディション』
出演:林遣都 桐谷美玲
発売日:8月8日
価格:¥3990(税込)
発売・販売元:アニプレックス
(C)2012 中村光/スクウェアエニックス・AUTBパートナーズ

筆者プロフィール

飯塚健(いいづか けん)
1979生まれ。映画監督。脚本家。小説家。主な作品に、『Summer Nude』、『荒川アンダーザブリッジ』(ドラマ・映画共に)、『REPLAY&DESTROY』、『FUNNY BUNNY』(舞台)などがある。

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