週末、このコラムの連載開始を祝し、「始まりに、宴はつきものだ」という名のもとに、プロデューサー各位がお酒の席を設けてくださいました。お初な面々ということもあり、席は愉快この上なく、ライク・ア・ローリング・ストーンばりに話題も実に豊富に転がりました。そうしてワインマスター・平田PチョイスのGreatな赤ワインが1本空いた頃……「ずばり監督は、どうやって物語をつくってるの?」という、ずばりすぎる超難問を問われ、「そうっすねえ、超簡単に言えば」と超簡単に言ってしまった答えを、少しだけ掘り下げようと思います。
例えば先日、こんなことがありました。
時刻:夏のお昼前。
場所:なんてことない道。
状況:蝉がわんわんうるさい。
できごと:一通のメールが届く。
件名は「速報」、本文には「本日結婚しました」とだけ。JPEGの添付ファイルあり。私と妻に宛てられたそのメールは、仲間うちの若き女優からで。もちろん驚いたものの、ファイルを開けば、なんてことないドッキリで。撮影現場の合間に撮ったと思しき、共通の知り合いであるスタッフとの2shotだった。
……というできごとを、少々の脚色でもって「物語化」すると、例えばこんな感じになる。
夕暮れ、都心の高速は甲殻の虫が群れ集まっているかのような、Uターンラッシュに沸いていた。対照的に私は、その渋滞を眺めながら優雅に側道を歩いていた。「お疲れさまです!!」とでも言いたい気分だな、と思っていると何の因果か、「お疲れさまです!!」という件名のメールが夏の電波にのって届けられた。
私と妻に宛てられたそのメールは、「エビ大好きバカ2号」こと、仲間うちの若き女優からで、本文には「本日結婚しました」とだけあった。「え?」「マジで?」と思わず私は、茜色に染まった空にケータイをかざしてしまった。つまり、それほど驚いたのだ。すっかり静まっていた蝉も、急にわんわん鳴き出した……ような気がした。
ともかく、添付されていたJPEGファイルがダウンロードされる僅かな時間ももどかしいほどだった。……が、表示された写真を見れば、なんてことないドッキリで、撮影現場の合間に撮ったと思しき、共通の知り合いであるスタッフとの2shotだった。
とまあそんな感じで、本来であれば、私のリアクションで締めくくるのがベターであろう。というわけで、今週の添付写真は、エビ大好きバカ1号・すなわち私の返信メールである。
飯塚健(いいづか けん)
1979生まれ。映画監督。脚本家。小説家。主な作品に、『Summer Nude』、『荒川アンダーザブリッジ』(ドラマ・映画共に)、『REPLAY&DESTROY』、『FUNNY BUNNY』(舞台)などがある。