『アツい』という形容詞を、侮辱の意味で使う奴にはならない。
言葉には賞味期限がありますし、己の年輪と共にその意味も変化します。若い頃、威風堂々と言えてた言葉が言えなくなる、そんなかっちょ悪いコトはやめようじゃありませんか皆さん!! と常日頃、私は思っているわけなので、今週は少しマジメなコトを書くことにします。
つい二日前(13日)のことです。書き物仕事に一区切りついた私は、「イイヅカ、秋撮影のドラマ脚本書けたってよ。 だからこれから、妻と映画ハシゴするってよ。だけど、明日15時がコラムの〆切だってよ」とSNSニュースフィードに戯れ言を書き残し、
『トガニ』と
『桐島、部活やめるってよ』を観に行ったわけです。
音楽が嫌いという人が稀なように、映画が嫌いという人も少ないと思います。が、嫌いな音楽は誰にでもあるでしょうし、嫌いな映画も同様でしょう。そういう意味で千差万別、十人十色、だとは重々承知してますが、2本とも快作でした。
特に、日本語に直訳すると「るつぼ」を意味する
『トガニ』。2005年、韓国の田舎街にある「慈愛学園」という聴覚障害者学校で“現実”に起きた実話です。地元の名士でもある校長を筆頭に、その双子の弟である行政室長、親族でありながら校長の愛人でもある女寮長、男色の暴力教師など、学校ぐるみで生徒たちに性的暴行を行っていたのです。
そんなおぞましい事実を知った新任教師が立ち上がりますが、警察は既に校長に買収されていて話にならない。だったらと教育庁に相談するも“管轄じゃない”とふざけたことを言うばかり。それでもどうにかマスコミのチカラを借りて、裁判沙汰にまでこぎ着ける。が、そこでも検事と弁護士の癒着、長いモノに巻かれた判事、金と弱みにつけ込んだ示談の成立など、決して他人事じゃない、ここ日本でも起こっているであろう典型的な権力構図を前に、幼き子どもを犯した連中は執行猶予のついた甘すぎる判決にとどまった。どころか、のうのうと職場復帰まで果たしたのです。
…と普通ならここで終わるのが、認めたくはないが、“一般的な”顛末だ。が、本件は違った。そもそもこの映画は、兵役中に原作小説を読んだ、いわゆる韓流イケメンスターが映画化に動き出したことによって実現した作品である。それがどれほど大変なことかは、職業柄知っているつもりだ。そして、1本の映画が“現実”を動かすことなんて、あるとは思ってもいなかった。
本作
『トガニ』は韓国で公開されるや460万人以上を動員。そして闇に葬り去られようとしていた事実を知った国民は怒りに震え、国家を突き動かした。「トガニ法」という新たな法律が“現実”に生まれ、校長らは再逮捕。問題となった「慈愛学園」は廃校となったのだ。
最悪の罪が当たり前に罰せられたことはもちろん、1本の映画が持つチカラを証明してくれたことを、嬉しく思います。
そして、コン・ユという名の俳優は、間違いなくアツい。