Wii Uのローンチタイトル「ZombiU」の試遊レポートを掲載。武器も物もない世界で繰り広げられる,厳しすぎるサバイバル
- 更新日:2012年12月10日
またゾンビ……というのが,ユービアイソフトから2012年12月8日にWii Uのローンチタイトルとして発売された「ZombiU」(以下,ゾンビ U)を最初に聞いたときの個人的な印象だ。初公開は2012年のE3開催前日,ロサンゼルス市内で行われたカンファレンス,「Ubisoft E3 2012 Media Briefing」においてで,会場ではタイトルの発表とムービーの公開が行われている。
ちなみに,1986年に創業したUbisoft Entertainmentの最初のタイトルは,同年にリリースされた「Zombi」であったこともトリビアとしてそのとき語られているが,対応機種は,Amstrad CPCという,おそらくよほどのマニアでなければ知らないパソコンだそうだ。
それはともかく,アドベンチャーゲームからミリタリーFPSまで,欧米ゲームでゾンビはちょっとしたブーム。ここに新しいページを付け加えるのは,かなり難しいのではないだろうかという気がしたのは事実。
「ZombiU(ゾンビ U)」公式サイト
※PCサイト
それから約半年,11月18日に北米でWii Uが発売され,ローンチタイトルとしてゾンビ Uもリリースされた。Metacriticのメタスコアを見ると,欧米48メディアの平均として76点を獲得しており(12月6日現在),評価はまあまあといったところ。しかし,Amazon.comの読者レビューでは購入した欧米プレイヤーの評価は軒並み絶賛。時間と共に評価は変わりがちだが,ともあれ,こうした乖離はどういう理由によるものなのかちょっと気になるところです。
そんなとき,ユービーアイソフトにおじゃまして,ゾンビ Uをプレイする機会を得たので,ここで紹介したい。
これまで掲載した記事でも書いたと思うが,改めて説明すると,舞台となるのはゾンビアウトブレイクが発生した2012年のロンドン。多数の死体が横たわりゾンビが徘徊する中で目覚めた主人公は,無線の声に導かれて過酷なサバイバルを開始するという設定になっている。
声をかけてきたのは,安全地帯に脱出したと思われる“プレッパー”という人物で,彼の指示に従ってミッションを進めていくことになる。ちなみにPrepperとは,日頃から有事に備え,万一のときにも他人に助けを求めることのないライフスタイルを送っている人々を指すそうだ。
ゲームの目的は非常にシンプルで,「より長く生き残ること」だ。いくつかの謎を解いたりすることはあるものの,人類を救うなどといった壮大な目的は用意されていない。
ゲームにはシングルプレイとマルチプレイがあり,シングルプレイにはノーマルモードとサバイバルモードの2つが用意されている。ノーマルとサバイバル,難度などに大きな違いはないが,サバイバルモードは,一度死んだらそれでゲームオーバーとなり,それに対してノーマルモードは,隠れ家から再スタートする。特徴的なのは,一度死ぬと,新たなキャクターとして生まれ変わることで,ゾンビに殺された以前のキャラクターは新たなゾンビとなり,殺された場所のあたりをウロウロしているのだ。
つまり,本作にはメインキャラクターが存在せず,この点が個性的だ。操作することになるキャラクターは男性だったり女性だったりするのだが,すべて普通の人々で,元傭兵とか凄腕のヒットマンとか,そういうバックグラウンドは付いていない。そういう人々に,次々に生まれ変わり,与えられたミッションに挑んでいくことになるわけだ。
生存者達。学生や配管工,警備員など,いずれも普通の人々だ
重要なのは,前に持っていたバックパックの荷物を,ゾンビとなった前のキャラクターが持ち続けていることだろう。ゾンビアウトブレイクに襲われたロンドンには,とにかく物がない。生き残るために武器は必須だが,最初は威力の低いものしか持っておらず,銃や弾丸などはプレイ中に拾わなくてはならない。また,体力の自動回復もないため,救急パックも必要だ。さらに,体力をわずかに回復する食べ物や発煙筒などのアイテムもあるが,いずれもなかなか手に入らない貴重品だ。
せっかく集めたアイテムだけに,放っておくわけにはいかず,物資を回収するには,それまで自分が操作していたキャラクターを見つけて倒す必要がある。ちなみに,回収できないまま再びゾンビに殺されてしまうと,その段階でアイテム類はなくなってしまう。つまり,生まれ変わったら即,アイテムを取り戻しに向かわなければならないのだ。
このような世界で生き残るには探索が最重要課題になり,プレイヤーはマップ上をあちらこちらと探し回ることになるが,ここで役に立つのがWii U GamePadだ。これをセンサー代わりにしてマップを走査すると,何かがありそうな位置が特定できる。ただし,行ってみたら「アイテムなし」と表示されることも少なくない。なんだよー。
また,拾ったアイテムを出し入れするインベントリ操作もWii U GamePadで行う。バックパックに入るアイテムの数には限りがあるので,きちんと整理しなければすぐにいっぱいになってしまうのだ。この作業は,タッチスクリーンで直感的に行え,例えば,弾丸1発の入った箱に,5発入った箱を重ねると,6発入りの箱ができるという具合だ。
本作は基本的に一人称視点で進むのだが,死体やロッカーなどからアイテムを拾う際には三人称視点に変わり,自分がモノをあさっている場面が見られる。時間が止まるわけではないので,ここでゾンビに襲われると大変なことになる。そのため,ビクビクしながらしゃがみんで死体やスーツケースをあさり,何か物を手に入れたらインベントリを操作してしまい込む。そんなときに不意にゾンビが出現すると,あせってタッチ操作に失敗したりするので要注意だ。えーと,銃に弾を込めて,これをあそこにしまって……ああ,やられるう。
マルチプレイは,Wii U GamePadと通常のコントローラで対戦
ちなみにマルチプレイはオンラインではなく,Wii U GamePadと通常のコントローラをもった2人のプレイヤーが戦うというスタイルだ。1人がWii U GamePadを使ってゾンビを配置し,もう1人がそのゾンビを倒していくというもので,エリア内にある旗をすべて占拠する「アサルト」,息絶えるまで一体でも多くのゾンビを倒す「バトルエリア」,そして一秒でも長く生き続ける「サバイバル」という,3種類のモードが用意されている。
Wii U GamePadで周辺をサーチ
Wii U GamePadはそのほか,鍵のかかったドアをピッキングしたり暗証番号を打ち込んだり,電子機器をハッキングしたり,機関銃の照準だったりとさまざまな機能を持つが,いずれもゲームの流れにうまく組み込まれており,とってつけた感は少ない。
短い時間の試遊だったが,このゾンビ Uがプレイヤーを選んでしまうタイトルであることは間違いなさそうだ。難度はシビアであり,筆者は何度も倒されてしまった。キャラクターはか弱く,ゾンビの打撃で大きなダメージを受け,さらに一噛みされるとあっさり死んでしまう。アクション性は必ずしも高くなく,銃でバタバタと敵を倒す快感には乏しい。しかし,ゲーム全般に用意されたこうした難しさを,「普通,そうだよね」と思えれば,Amazon.comの読者レビューで購入者が絶賛しているように,この世界にはまってしまいそうだ。銃を撃ったことのない普通の人が,機関銃を片手にランボーのように戦えるはずがないし,いろいろなアイテムが都合良く落ちているわけもない。何発か弾丸の入った箱を拾ったら,ゾンビが現れないか周囲を気にしつつ,弾丸を取り出し,ほかの箱の弾丸とひとまとめにしてポケットに放り込むはずだ。
スマホで地図を見ながら歩いていたら,うっかり電柱にぶつかりそうになった経験は誰でも持っているはずだが,Wii U GamePadばかり見ていて,ふと顔を上げたら正面にゾンビが! というゲームメカニズムはWii Uならではだろう。それを避けるために,ミニマップを画面に出せばいいんじゃない,という方向には行かず,あえてこういうゲームデザインにしたおかげで,サバイバルの恐怖感,孤独感が生み出されている。最近では,集団でなぎ倒されるためだけに存在していたゾンビだが,本作では一撃で倒すこともできない,やっかいな存在として描かれている。
「ZombiU(ゾンビ U)」公式サイト
※PCサイト
なじむまでにはそれなりに時間がかかりそうだし,こなれていない部分もないわけではないが,完全新規IPとして,Wii Uの機能を使って何をすればいいのかを試行錯誤した結果,非常に個性的なゲームになっているという印象だ。他機種への移植はおそらくなさそうなので,ゾンビ Uを遊ぶのはWii Uプレイヤーの特権だ。何を買おうか迷っている人は,選択肢の一つに入れてもいいのではないだろうか。
(C) 2012 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. ZombiU Logo, Ubisoft, and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the US and/or other countries.
※この記事は、4Gamer.netより提供された情報をもとに、テレビ朝日が改変・編集し掲載しています。元記事はこちら