MMORPGにおけるコントローラ操作のスタンダードになりえるか――ついに公開された「FINAL FANTASY XIV: 新生エオルゼア」のPS3版SSに関して,吉田氏と皆川氏にいろいろ聞いてみた
- 更新日:2012年10月17日
これまで,PC版のスクリーンショットやプロモーションムービー,実機プレイデモと,次々と“新生”の姿が明かされてきた「FINAL FANTASY XIV: 新生エオルゼア」(以下,新生FFXIV)。2012年9月1日からは「αテスターの募集」が始まり,いよいよかと期待が高まっている本作だが,もう一つのプラットフォーム,PlayStation 3版がどのようなクオリティで登場するのかも,ファンのあいだで尽きない話題となっている。
そして10月11日,ついにそのPS3版のスクリーンショットが公開されたのだ(関連記事)。4Gamer読者はこのスクリーンショットを見て,どのような印象を持っただろうか。もちろんPC版における高い負荷設定での映像クオリティとは単純比較できないが,個人的にはPC版で感じられる新しい表現は,しっかりとPS3版でも再現されていると感じられる。
一方,ところどころに見られるPC版とは異なるユーザーインタフェース(UI)は,どのような仕様になっているのか。そしてPS3のコントローラを前提としたUIには,どんな工夫が凝らされているのか,いろいろと興味をそそられてしまう。
今回,これらの画像が公開されるにあたって,新生FFXIVのプロデューサー兼ディレクターを務めるスクウェア・エニックスの吉田直樹氏と,リードUIアーティスト兼リードWebコンテンツアーティスト 皆川裕史氏のお二人から話を聞けたので,その気になる内容をお届けしよう。
FINAL FANTASY XIV,The Lodesotne
※PCサイト
「FINAL FANTASY XIV」公式サイト
※PCサイト
コンシューマRPGの概念を落とし込んだUIはカスタマイズ次第でマウス操作を超える?
4Gamer:本日はよろしくお願いします。ついにPS3版のスクリーンショットが公開されましたが,これはPS3実機からキャプチャしたものなんですか?
吉田直樹氏(以下,吉田氏):今回公開した画像は,本当に実機で動いているものを“撮って出し”――つまり,撮影して一切の編集を行っていないものです。画像を見ていただければ,以前からお話をしていたように,PS3版でもPC版と遜色ないグラフィックスを出すという部分を,かなり追い込めていることが分かると思います。
4Gamer:確かにぱっと見だと,PC版の雰囲気がPS3版でもしっかりと再現されていると感じました。もちろん,よく見てみればドットの大きさなどで,違いは分かりますが。
吉田氏:ドットは,きっと公開後のスクリーンショットで数える人がいるだろうなあとは思います(笑)。
4Gamer:ああ,“内部解像度”のお話ですね(笑)。
皆川裕史氏(以下,皆川氏):PS3版は,3Dグラフィックスを1280×544ピクセルで描画し,その画像を縦720ピクセルに拡大した上に,UIを描画しています。表示解像度としては1280×720ピクセルですね。
吉田氏:UI部分は,解像度を落として描画すると表示が乱れてしまうので,レンダリングの際に最後のレイヤーに別描画しています。
3Dグラフィックス部分は,PS3のメモリや表示仕様に沿って,解像度を落としてレンダリングする必要がありました。その際にピクセルの縦横どちらを伸ばすかという選択が生じるのですが,今回はMMORPGということで,ゲームとしては周辺状況の把握が重要だと考えました。つまり横方向にカメラを振る機会が増えると想定し,横の解像度を選択したわけです。
ただ,そうすると階段などの横方向のラインでノイズ(ジャギーなど)が出やすくなってしまうのですが,それでもゲームプレイを優先するほうがいいだろうと考えました。
4Gamer:PCのMMORPGでも,結局のところ最高のグラフィックスよりも,最適なプレイ感覚を求めますよね。高品質のグラフィックスであるに越したことはないですが。
吉田氏:そうですね。MMORPGは数百時間,数か月間,人によっては年単位で遊ぶものですから。もちろん,まだ調整の余地はあるのですが,グラフィックスは,ただ高品質にこだわるだけではよくないと,チームでも話しています。
4Gamer:今後,PvPなどで多人数表示が必要なコンテンツが出てくることを考えると,それはより重要になりそうです。
では,スクリーンショットから見えてくる,PS3版のUIに関して教えてください。まず,画面から横長のホットバー(アクションパレット)がなくなって,それに変わるものが配置されていますよね。なんとなく,PS3のコントローラのL2/R2を使ったキーコンボで,複数の入力を行うんだろうとは予測できますが。
吉田氏:これは,「クロスホットバー」と呼んでいるもので,方向キーでターゲットを選択し,おっしゃるとおりL2またはR2を押しながら対応する方向キー/ボタンを押して,スロットに登録したアクションやスキルを即発動するという仕組みです。
4Gamer:だから,各スロットが方向キーやボタンと同じ,十字型の配置になっているんですね。
吉田氏:コントローラのUIは,今やスタンダードとなった左スティックでキャラクターの移動,右スティックでカメラ移動という部分をベースに,PC版のマウス/キーボードに負けないくらい,誰をターゲットして何をするのか。そして,それを素早く実行できることに重点を置いたものになっています。
4Gamer:実行までのステップ数が少ないわけですから,かなり直感的に使えそうですね。ちなみに,公開されたスクリーンショットでは,L2側は左側だけに,R2側は右側だけに偏ってスキルアイコンが配置されていますが,これには何か理由があるんですか?
吉田氏:これはアクションの初期配置なのですが,スクリーンショットを見て,複雑な操作が必要だという印象を与えたくなかったからです。
スクリーンショットの状態だと,L2ボタンを押せば方向キーの対応スロットが,R2ボタンを押せば○×△□ボタンの対応スロットが発動するわけです。こういう配置であれば,L2/R2を押したときに,どのキー/ボタンを押せばいいのかが直感的に分かりやすいですよね。実際に,通常のゲームプレイであれば,この8種類のアクション/スキルだけでも十分なんです。
皆川氏:もちろん,16枠のスロットすべてにアクションを登録できますが,L2ボタンとR2ボタンで8種類ずつのアイコンを使い分けて遊ぶというのは,ゲームに慣れた中盤以降になります。ゲームの序盤からすべてのスロットを駆使しなければならないようなゲームでは,まずいですよね。
4Gamer:確かに,操作がこんがらがって,間違ったスキルを発動させる自信があります。
吉田氏:そうですよね(笑)。そこで,まずはL2ボタンで方向キーの4種類,R2ボタンで○×△□ボタンの4種類だけで,プレイするという見せ方を選びました。
ちなみにスクリーンショットにあるアクションの配置ですが,L2ボタンを押しながら,方向キーを操作すると,どうしても左スティックから(親)指を離すことになります。そこで,オートアタック/スプリント/エモート/チョコボの呼び出しという,比較的アクション性が低めで,繰り返し実行しなくともよいものを初期配置としてセットしています。
その一方でボタン側にはウェポンスキルなどをセットし,従来のコンシューマゲームと同じ感覚で遊べるよう配慮しました。
4Gamer:さらにやり込む人は最大の16種類までセットして,人差し指で方向キーを操作する,いわゆるモンハン持ちのように構えて,移動しながらアクションを利用しそうですね。
吉田氏:そういうプレイヤーも出てくると思います(笑)。ですが,今回のスクリーンショットは,まず,どういうシステムなのかを理解していただくことが目的なので,あえてこの状態で撮影しています。
4Gamer:ちなみにクロスホットバーにも,キーボード/マウス操作と同様に,パレットが複数ページあると思いますが,何ページくらいあるのでしょうか。
皆川氏:16個のスロットを一つのセットとして,クラスごとに最大8つのセット、つまり16×8の128アクションを登録できます。セットの切り替えは,L2/R2ボタンの同時押し+方向キー/ボタンです。
4Gamer:1クラスで128スロット分,それを各クラスで別々に登録できるなら,十分というか,かなり多いですね。
皆川氏:ただ,8つというのは,あくまでも現時点の想定です。正直,本当にこれだけ必要かどうか迷うところはあるのですが,現行のFFXIVを参考にすると,これくらいは必要になると考えました。もし多すぎて使いづらいようであれば,数を減らすことも考慮します。
吉田氏:とは言っても,16スロット全部を使うのは難しいというプレイヤーであれば,例えば右側のボタンだけにアイコンをセットしたパレットを8つ用意するという使い方ができますし,それ以外にも,1枚のパレットをエモート専用にする人もいるでしょう。ですので,パレット数が多いほうが,いろいろと試していただけると思います。
4Gamer:なるほど。プレイヤーの遊び方次第で,かなりカスタマイズのしがいがありそうです。ただ,とっさのL2/R2同時押しによるページの切り替えは,ちょっと慣れが必要かもしれませんね。
吉田氏:突き詰めてやり込んでいるプレイヤーさんなら,自然と切り替えられるようになると思います。また,マクロを組んでアイコン化したものをセットできますから,「パレットの3を呼び出す」というマクロアイコンをセットしておけば,より簡単に切り替えができるわけです。
4Gamer:ああ,8ページもあると,パレットを切り替えるマクロコマンドは必須ですよね。マクロをうまく使って,一連のウェポンスキルのコンボなどを登録しておけば,かなり利便性が高くなりそうです。
吉田氏:ですから,新生FFXIVでPvP大会を開いたら,コントローラを使って勝ち上がってくるプレイヤーも出てくるかもしれません。人間の手先とマクロの組み方,そしてスキルの配置によって,マウスとキーボードでの操作速度に勝てる人も出てくるだろうという感じですね。
4Gamer:ちなみに,PC版でのコントローラ操作のUIも,PS3版と同等のものになるんですか?
皆川氏:はい。PC版の「ゲームパッドモード」として用意しています。ただし,マウス/キーボードとの操作の併用はできません。それをやってしまうと操作体系がムチャクチャなことになりますから。ただ,操作モードはゲーム中にいつでも切り替えができます。
吉田氏:今回はチュートリアルも徹底して作り込んでいますが,コントローラとマウス/キーボードを併用できるようにしてしまうと,分岐が多くなりすぎてきちんと説明しきれません。ですので,ご自身で選択した操作方法によるチュートリアルガイドを進行していただきます。なお,ゲームパッドモードはβテストから選択できるようになる予定です。
入口はコンシューマゲームのコントローラ操作
4Gamer:UIのほかの部分についても教えてください。画面右下に4つの数字が並んでいますが,これはバッグに関係するものでしょうか。PC版では,バッグの中の状況が分かるUIがあった場所だと思うのですが,この画面にはありませんよね。
吉田氏:ええ,そうです。初期状態のプレイヤーキャラクターは,25種類のアイテムが入るバッグを四つ持っていますが,これは各バッグに何種類のアイテムが入っているのかを表示しています。PC版だと,装備なのか素材なのかといったものが,色分けされて詳細に表示されるのですが,PS3版では簡略化しています。要は,「満杯になりそうだから一度街に帰ろう」「まだ空きがあるから採集を続けよう」という判断基準にしていただくものです。
皆川氏:また,バッグにも関連することですが,各ウィジェット(ウィンドウ)を開くときに,PC版であれば,丸いアイコンを直接マウスカーソルでポインティングして呼び出します。ですが,コントローラ操作ではそれが困難です。
4Gamer:マウスカーソルのようなものを表示して,スティックでポインティングする……というのも考えられますが,どう考えても快適とは思えませんね。
皆川氏:はい。加えて,PS3版の場合は解像度が固定で,PC版のHD解像度と比較すると表示面積が限られますから,常に表示するメニューは攻略に差異のない範囲ですっきり整理させるため,メインメニューから所持品バッグなどのウィジェットを開く形にしました。ちなみにメインコマンドは,□ボタンで呼び出せます。メインコマンド表示中は,ほかのウィンドウは非表示になるのですが,基本的にPS3版では,1画面に1つの機能ウィンドウになります。
4Gamer:なるほど,階層形式で構成されているわけですか。
吉田氏:今回は,コンシューマのFFシリーズのファン──とくに新しい世代の皆さんに新生FFXIVを触っていただきたいという思いがあります。そこで入口は,コンシューマゲームのように,メニューから一つ一つ段階的にやりたいことを選んでいくという形式にしました。だから,メインコマンドを開いた画面は,あまりMMORPGっぽくないんですよ。
4Gamer:確かに,スタンドアロン型のコンシューマゲームのように見えますね。
吉田氏:ええ,そこが大事なんですよ。これまで「ドラゴンクエスト」シリーズやFFシリーズなどを遊んできた人にとっては,PCゲームのように,画面に表示されているものを直接ターゲットするという発想がそもそもないと思っていますし。
4Gamer:だからこそコンシューマゲームのように,階層型のメニューから入ってもらうわけですね。一方で,慣れている人には奥の階層まで進めるのは,手間に思えるのでは。
吉田氏:(クロス)ホットバーには,ウィジェットへのショートカットも登録できます。ただ,それは上級者の遊び方でしょう。そういった遊び方は,我々が最初から提示せずとも,例えばコミュニティの中でフレンドから教えてもらって覚えても十分だと思います。
4Gamer:なるほど,メインメニュー項目のアイコン化もできるんですね。
吉田氏:メインメニューで選択できる機能は,すべてマクロアイコン化してセットできます。ですので最終的には,やり込んだプレイヤーであれば,メインメニューを一切開かず,クロスホットバーだけでプレイできるようになります。PCのMMORPGでも,基本的にメインメニューを開かずに,キーボードのショートカットでバッグを開いたりして,プレイできるじゃないですか。それと同じイメージです。
4Gamer:8ページあるパレットのどこかで,有効に使いたいですね。ちなみに,PS3版のUIは,どのようにレイアウトを変更するのでしょうか。
皆川氏:メインメニューの「HUD(ヘッドアップディスプレイ:常時表示情報)」の項目に,操作アンカーを各UIに移動させる機能と,個々のUIの表示位置やサイズを変更するための項目があります。
4Gamer:アンカーというのは?
皆川氏:のちほど正式名称を変更するかもしれませんが,パッド操作専用の「カーソル」のことです。マウスカーソルとの呼び分けですね。
4Gamer:あ,なるほど。それって,FFシリーズのいつもの「指」ですよね(笑)。
皆川氏:ええ,いつもの指です(笑)。例えば,画面右上にあるナビゲーションマップの拡大縮小(+/-)ボタンを操作する場合は、HUDから「ナビマップ」を選択してアンカーをナビマップに移動して○ボタン,となります。ただ,これだけでは操作の手順が長いので,ゲームに慣れている方のために,コントローラやキーボードのショートカットも用意します。
吉田氏:コンシューマ機でプレイヤーがアクションを起こす場合,通常は「何がしたいか」から入ります。ナビマップの拡大縮小をしたければ,メインメニューを開いて,そこからナビマップを選んで,さらに拡大なり縮小なりの項目を選ぶという感じです。
ちなみにメインメニューの「HUD」ですが,リリース時には別の名称に変えていると思います。
4Gamer:これは仮のものということですか。
吉田氏:まだ,メニューの名称に関しては最終調整が入る前のものです。ここは難しいところで,僕がドラゴンクエストシリーズ制作の出身なので,ひらがなを使いたくなるんですよ(笑)。
皆川氏:ソーシャルが「なかま」みたいにね(笑)。
一同:(笑)
吉田氏:ですが,FFというタイトルだと,ひらがなは合いませんし,海外ローカライズに,それでは伝わらないと怒られるんですよ。ほかの文字に関しても最終調整を行います。
4Gamer:では,それを前提に「ソーシャル」「コンテンツ」「ライブ」といったメニューに関しても教えてください。前者の2つは名称から想像できそうですね。
吉田氏:「ソーシャル」はフレンドやリンクシェル,フリーカンパニーなどのコミュニティ関連です。「コンテンツ」は「コンテンツファインダー」の呼び出しと,コンテンツごとのリワード(報酬)再取得までの期限の確認などができます。
4Gamer:リワードの再取得期限といいますと?
吉田氏:今回,新生FFXIVでは,ボスモンスターのレアアイテムドロップを確率で縛りつけるのではなく,ボスを倒せれば必ずなんらかの報酬が得られるようになっています。
レアドロップも,1パーティに対して2~3個はドロップするので,それをパーティ内で抽選していただきます。その代わり,その抽選に参加する権利がコンテンツによって週3回まで,のように決まっています。そのリセットタイマーが各コンテンツに用意されるので,それの確認などですね。
もちろん,抽選に漏れた人にはトークン(チケットのようなもの)が渡され,トークンを貯めて交換できるアイテムもあるので,結果に対して必ず成果があるようになっています。
4Gamer:確実に2~3人はレアアイテムが手に入り,ほかの人にもちゃんと報酬が用意されていると。
吉田氏:レアアイテムに関しては,運が悪いとなかなか自分に権利が回ってこないかもしれませんが,それでも週3回や4回はチャレンジできますし,それで手に入らなければ,再取得まで別のコンテンツへという形になると思います。このあたりは,実際にプレイしていただかないと,感覚としてはお伝えしにくいかもしれませんね。
皆川氏:「コンテンツ」には,クエストやリーヴの受諾状態を確認する「ジャーナル」や,その時点でプレイヤーにおすすめのコンテンツを紹介する「おすすめリスト(仮)」がならびます。新生FFXIVでは受諾中のクエストがナビマップの下に表示され,これもアンカーを項目名にあわせて○ボタンを押すことで,関連情報が簡単に確認できます。
吉田氏:ここは,実はPC版でもこだわって作っている部分で,クエストの見出しをクリックすればジャーナルが,具体的に何をするのかという文章をクリックすれば周辺マップが開くようになっています。このあたりは,PC版のαテストでご確認いただけます。
4Gamer:クエストの進行が分かりやすくなっているんですね。ちなみにライブというのは?
吉田氏:エオルゼアの世界における“生活”を指します。例えば制作手帳や採集手帳はここで見ることができます。モノを作る,素材を集める,あとはハウジング関連のコマンドもここに入ります。
4Gamer:なるほど,リアルタイムに行われているイベント情報などかと思いましたが,そちらの意味だったんですね。
必要な情報はキャラクターの周囲に表示
ログを気にせず遊べるフライテキスト
4Gamer:スクリーンショットで,キャラクターのセリフが吹き出しになっているものがありますが,これはNPCの発言ですか?
吉田氏:そうです。発言などのログ関係を,順を追ってご説明しましょう。今回,可能な限りログを見なくともプレイできるように制作したため,バトル中も「誰が何をした」というような情報が,フライテキストとしてPCの周囲に表示されます。
もちろん,こういったフライテキストやNPCのセリフなどは,すべてログに記録されますし,むしろログのほうが詳細に記載されます。ですが,それは装備の計算式まで気になるようなレベルの方が,見るものでいいだろうと。
皆川氏:上級者プレイヤーの中には,キャラクターではなく,ログだけを見てプレイしている方がいますよね(笑)。
4Gamer:誰がどんな行動を取ったのか,正確に知ろうと思うとログが頼りになりますからね。
吉田氏:自分もそういうタイプのプレイヤーでしたが,これから新生FFXIVでプレイヤーさんを増やそうと考えた場合,そうではないでしょうと。例えば,コミュニティに入って,初心者の方が「ログ読んでないの? ちゃんと書いてあったでしょ」と言われたら辛いですよね。
一方,PvP主体で遊ぶ人であれば,ログとにらめっこしながらプレイするだろうと思います。PvPでは,情報の見落としが命取りになりますから。しかし,そのスタイルを普通にプレイしている人達に押し付けるのはしんどいだろうなと。
4Gamer:それを解決するのがフライテキストですか。
吉田氏:そうです。開発中のエピソードになりますが,初期αバージョンクライアントの内部テストでは,アイテムドロップの情報がフライテキストで表示されなかったんですよ。
僕がプレイしていたらアイテムが全然ドロップしなくて,担当に「これアイテムドロップにバグない?」とクレームを入れるとそんなはずはないと。よくよくログを確認してみたら,確かにログにはボロボロと出ていたんです。つまり,アイテムドロップを含めて,実際にそれまでログをずっと見ないでプレイしていたので,気がつかなかったんですよ(笑)。それで「ああ,これフライテキストにドロップ情報ないよ?」って言ったら,「あ……ほかの開発にも言われたのは,これのせいか……」と担当者が。
開発チームには現行FFXIVのプレイヤーもかなりいますが,彼らですらもうフライテキストに慣れてしまって,ログを見なくなっているという証拠ですね。
4Gamer:フライテキストだけで,情報が足りていたわけですね。
吉田氏:ええ。αテストで公開するバージョンでは,ちゃんと「アイテムが手に入った」という情報がフライテキストで表示されます。なお,具体的に何が手に入ったのかは,フライテキストが長くなりすぎるので,ログにだけ記録されます。このあたりのさじ加減も大切ですね。
4Gamer:それだけログを見なくても遊べるということは,先ほどの画像のように,プレイヤーも吹き出しでチャットができるんですか?
吉田氏:いえ,それはないです。また今後やるつもりもありません。
4Gamer:それはなぜでしょうか。
吉田氏:やはりPvPを含め,エンドプレイヤー寄りのコンテンツになっていくほど,ほかのプレイヤーの一言が重要になります。「そっちに行くな!」だとか。そのときに,ほかの吹き出しで見えなかったり,吹き出しが消えてしまったりで,発言を見逃してしまいかねないので。
4Gamer:確かに,戦闘が大規模になっていくほど,指示の見逃しは痛いです。
皆川氏:ですからチャットのテキストは,必ず画面に表示されることを重視しています。
吉田氏:吹き出しも“皆がいて,それぞれに話している”という雰囲気が出て,非常に生活感があるのですが,やはり最終的には邪魔だという人が出てくるでしょう。雰囲気と最終的に求められる利便性を両立するのは,相当難しいことです。
皆川氏:ちなみに,吹き出しで会話しているNPCですが,正式名称ではありませんが開発チームでは「賑やかしNPC」と呼んでいます。スクリーンショットで頭上にネームが出ているのがプレイヤーと会話できるNPCで,それ以外がターゲット(直接会話が)できない,「賑やかしNPC」です。
4Gamer:ターゲットができないということは,近づくと自動で何らかのセリフを話すわけですね。
吉田氏:僕個人の好みとしては,本来RPGでターゲットできないNPCがあまり好きではありません。「ドラゴンクエスト」シリーズや「ゼルダの伝説」で育ってきましたので,街にいるNPCは全員に話しかけられるものだと考えてしまいます。ゼルダなら,離れたところにいるNPCでも,ナビィがターゲットして会話できるようになっていますよね。
ところが,新生FFXIVはこれだけ広大な世界を描いていますから,すべてのNPCに意味を持たせることは事実上不可能です。しかしNPCを減らしてしまっては,生活感が演出できません。昨今のコンシューマRPGのようにボイスを使った演出も,今後のアップデートを考えると,スピードを重視しつつ、すべての会話セリフに多言語ボイス対応するというのは不可能ですし,現実的ではありません。
4Gamer:アップデートのたびに普通のNPCにまでボイスの収録をして,しかも多言語となると,時間がいくらあっても足りないですね。
吉田氏:そこで,「賑やかしのNPC」は,プレイヤーが近づくと吹き出しでセリフが表示され,遠ざかると消えるようにしました。例えば会話できるNPCが演説していると,それについて「賑やかしNPC」が感想を言っていたりするわけです。
これは日本のRPGっぽい部分ですね。「フルボイスにしてほしい」というリクエストもあると思うのですが,長くプレイするゲームだと,BGMを消して,ほかの好きな音楽をかけながら遊ぶようになることもありますし。
4Gamer:ああ,よく分かります。
吉田氏:そうなった場合に,例えばフルボイスでテキストを非表示にすると,重要な情報を聞き逃してしまうかもしれません。そういったことも踏まえて,画面上にテキストを表示させることに勝る手段はないだろうと。ここは「古い」と指摘されようが,このままで行こうと考えています。
また,今回,NPCに吹き出しを付けたのは,「FFっぽいね」「ジャパニーズスタイルだね」と思っていただけるような,コンシューマゲームに親しんできた人や,海外の日本のゲームファンに向けた取り組みでもあるんです。
4Gamer:確かに,コンシューマゲームのような雰囲気が出ていますね。もう1点,スクリーンショットで気になったのが,PC版では左上に出ていた経験値のゲージが,画面右下に移動していることです。表記も違うみたいですが。
吉田氏:これはまだまだ数値調整中のスクリーンショットなので,数値もほぼダミーのようなものです。バトルもコンテンツも,得られる経験値は現行バージョンとはまったく異なります。
4Gamer:新生FFXIVでは,クエストをクリアしていくと経験値が入る,いわゆるクエスト主体で進んでいくようになるそうですね。
吉田氏:そうです。序盤から,どんどんクエストで引っ張っていきます。逆にフィールドにいるモンスターを倒しても,経験値はそれほど獲得できません。
皆川氏:開発チームでも,実装されているクエストがなくなったタイミングで,「レベルが上がらない!」という悲鳴が上がります(笑)。クエスト担当者が「今クエスト追加してるから,数日待って!」と返答があると「じゃあ,クエスト入るまで待ちます!」って。
吉田氏:開発のみんなも現行バージョンでは,あんなにモンスターキャンプに行ってたのに(笑)。でも,そう思うくらいに経験値の獲得方法やゲームの導線,スタイルが現行バージョンから変わっているんですね。
4Gamer:思っている以上に,クエストの比重が高くなっていると。そうすると,クエストへの導線は重要になりますね。
吉田氏:とくに序盤は一つ一つ丁寧に導線を作っています。やはりMMORPG経験者にとって当たり前のことでも,コンシューマゲームから入ってきたプレイヤーさんには,初めてのことばかりですから。
PC版のαテストは2012年10月末に実施予定。PS3版の情報も順次公開していく
4Gamer:ところで,たびたびお話に出てきた,PC版のαテストですが,これはいつ頃実施されるのでしょうか。
吉田氏:いまのところ,2012年10月末に実施できる見込みです。ちょっとだけ心配なのは,皆さんの期待が高まりすぎていることですね(笑)。αテストは“あくまでもサーバーの負荷試験”なので,お手柔らかにと。
4Gamer:どうしてもプレイヤーとしては,新生FFXIVになってどう変わったのか,そのクオリティに目がいってしまいますよね。
吉田氏:クオリティという言葉も,プレイヤーそれぞれに定義が違っていて,グラフィックスの仕上がりを見たい方もいれば,UIを見たい,ゲームデザイン上の導線の流れを見たいという方もいます。
そこで今回は,サーバー負荷試験ではあるけれども,新生FFXIVの基礎部分まではチェックしていただくつもりでいないとダメだという話を開発チームにしています。
コンテンツに関しては,βテスト以降の実装をあらためてアナウンスしますので,今回はサーバーレスポンスや,フィールドが切り替わったときのローディングのスピードなどにはかなりこだわったので,注目していただきたいですね。
皆川氏:暗転時間中にローディングの演出を用意していたら,マップによっては切り替えの暗転時間がほとんどなくて,最初に用意した演出をそのまま使えなくなった、なんてこともありましたね(笑)。
吉田氏:そう,演出を入れたらかえって遅くなったんですよ(笑)。ただ,それくらい基礎はしっかりと作ってきました。
4Gamer:でも,ゾーンの移動速度が速いというのは,快適にプレイできそうで嬉しいですね。
吉田氏:ですので,αテストに参加したプレイヤーさんからは,「それで,本格的に遊べるのはいつ?」という話が出てくると思います。コンテンツに関しては,既存コンテンツの移植と,新規追加分の開発を,尋常ではない人数で進めています。そして,それを僕が全部チェックしているので,恐縮ではありますがジリジリお待ちください。
4Gamer:その作業量も尋常ではないですよね。
吉田氏:僕はそうしないと気が済まない性分ですし,今回は遊びに対しても責任を持ちたいですから。それに僕が考えるラインと合致するか,それを超えない限りは,この先10年を戦えるタイトルにはならないでしょう。
4Gamer:10年戦えるタイトル……その言葉で期待がさらに高まりそうです(笑)。では最後に,新生FFXIVの今後を楽しみにしている読者に向けて,メッセージをお願いします。
皆川氏:コントローラでも,マウス/キーボードと遜色ない操作ができることを目指してUIを作っています。できれば,MMORPGにおけるコントローラ操作のスタンダードと言われるくらいに仕上げたいという野望を抱きつつ,今,追い込み段階を迎えています。βテストでは触っていただけますので,PC版のプレイヤーさんも,ゲームパッドモードを試してみてください。
吉田氏:皆川の言うとおり,コントローラ専用UIをわざわざ別ラインで作っているのは,これまでのコンシューマ機のFFで遊んでこられたプレイヤーさんを,とても大切に考えているからです。これまでのFFシリーズと何も変わらない,肩に力を入れなくても遊べるものになっています。最初は方向キーとボタンで遊べて,その先も長いあいだずっと使い続けられるUIを作りました。ぜひお友達と情報交換しながら,いろいろ試してください。
また今回,PS3版の情報をようやく公開できました。ここまで長らくお待たせしてしまいましたが,今後は静止画だけでなく,動画,実機プレイと,段階を追ってお見せしていきます。ぜひ期待してください。
4Gamer:ありがとうございました。
――2012年10月1日収録
インタビューで言及されているとおり,PS3版および,PC版のゲームパッドモードは,コンシューマゲームメインのプレイヤーでも,戸惑うことなく自然にプレイできるように,さまざまな配慮がなされているようだ。
その一方でMMORPGの経験者に向けては,クロスホットバーのパレット切り替えとマクロのショートカットアイコンが用意され,カスタマイズ次第では,マウス/キーボードに劣らない,もしくはそれ以上の操作性を実現しているというのが印象的だ。
その操作感は,実際にプレイできるまで判断できるものではないが,皆川氏の言うMMORPGにおけるコントローラ操作のスタンダードになりえるものなのか。早くその感触を確かめてみたいところだ。
なお,今回のインタビューで見せてもらったUIは,デザイン周りなどが日々改良されているとのこと。現在の開発チームには,UIを含めゲームのすべての部分をより良くしようという雰囲気になっているそうで,吉田氏はインタビュー後の雑談で,その状況を「開発が全般的に順調だから」と話していた。その一方で,「欲が出すぎて,いつまで経ってもサービスが始まらないような状況は避けないと」と,冗談交じりに言っていたことが印象的だ。
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※この記事は、4Gamer.netより提供された情報をもとに、テレビ朝日が改変・編集し掲載しています。元記事はこちら