あらゆる要素を再構築して目指すのは最高のMMORPG。「新生FINAL FANTASY XIV」開発の意図と新コンテンツについて吉田直樹氏に聞いた

  • 更新日:2012年6月18日

 2010年9月30日にサービスが開始されたMMORPG「FINAL FANTASY XIV」(以下,FFXIV)の船出は厳しいものだった。プレイヤーからの大きな期待を受けたが,サービス開始後はアップデートの延期,有料サービスの一時凍結,開発チームの一新と,なかなか思う方向に進めない状態が続いた。

 この約1年半は,度重なるアップデートによって,クラススキルの一新やユーザーインタフェース,バランスの調整といった修正作業が,コンテンツの拡充と並行で行われてきた。それが功を奏し,今ではゲーム内はかなり落ち着き,プレイヤーからは公式フォーラムなどをとおして,前向きな意見も聞かれるようになっている。



 ゲームの大規模な修正と既存プレイヤーへのコンテンツの提供を同時に行うという,高度なバランス感覚を必要とされる一連のアップデートを先導しているのは,開発チームが一新された際に本作のプロデューサー兼ディレクターとして就任した吉田直樹氏だ。


 昨年10月には,新たなサーバーとクライアントを用いた「新生FINAL FANTASY XIV」(Version 2.0)の登場を予告し,FFXIVを根本的に甦らせる計画を推し進める吉田氏が,E3 2012の開催に合わせて,いよいよ具体的な動きを見せてくれた。


 6月6日に公開された新生FFXIVのアートワークとスクリーンショットは,かつてのFFXIVのイメージを払拭するのに十分な魅力を備えている。しかし,FFXIVのサービス開始当初のイメージをひきずるプレイヤーは,まだまだ多い。

 はたして新生FFXIVはどういった意図で開発が行われているのか。今回は,実装される予定の新要素から,アートワークとスクリーンショットからは読み取りきれない開発者の気持ちまで,本作にまつわることをE3 2012の会場で吉田氏に聞いてきた。

 なお,取材の冒頭では,吉田氏は新生FFXIVを作るうえで自身と開発チーム,運営チーム,そしてスクウェア・エニックスが大切にしている3つの柱について説明している。まずはそこから紹介していこう。


■1つ目の柱:最高のゲームプレイ

 吉田氏が考えるMMORPGにおける“最高のゲームプレイ”とは,バトルシステム,コンテンツ,育成要素,クエストなど,ゲームを構成するすべてを「最高のもの」にすることだという。さまざまな要素で成り立つMMORPGなだけに,すべてのクオリティを上げれば,それらの集合体はおのずと最高のものになるというわけだ。もちろん,最高の定義は人によって異なるだろうが,「細かい部分にも妥協せず,最高のものをプレイヤーに届けたい」とのこと。少なくとも,そういう思いが根底にあるということをプレイヤーに伝えたいと吉田氏は語っていた。


■2つ目の柱:最高のストーリー

 FFXIVはMMORPGである前にRPGであり,同時にファイナルファンタジーシリーズのナンバリングタイトル最新作である。そこで吉田氏は,ファイナルファンタジーらしさをしっかりと感じられる,最高のストーリーを用意することが重要なのだと語る。


■3つ目の柱:最高のグラフィックス

 最高のゲームプレイと最高のストーリーを長期間楽しんでもらうために必要なのが,3つ目の柱となる「最高のグラフィックス」だと吉田氏は説明する。MMORPGは長く運営が続くので,常に美しい,最新のグラフィックスを提供し,没入感を高めようという狙いだ。


 だが吉田氏は,この3つが揃ったとしても最高のMMORPGは完成しないと話す。というのも,この3要素の上にプレイヤーのコミュニティが強力に形成されてはじめて,「新生FFXIV」ができあがると考えているからだ。そして,シリーズの最新作として本作を作り込んだうえで,あらためてファイナルファンタジーのすごさを感じてほしいという思いを込めて開発しているのが「新生FFXIV」なのだという。

 今回のインタビューは,吉田氏によるこのような説明を踏まえてスタートした。


新システム「コンテンツファインダー」で
パーティプレイのハードルを大きく下げる


4Gamer:本日はよろしくお願いします。
 吉田さんは最高のゲームプレイを提供するうえでの重要項目として,バトルシステム,コンテンツ,育成,クエストといった複数の要素を挙げられましたが,具体的にそれぞれでどういったことを重視するのかを教えてください。


吉田氏:まずは,バトルシステムから説明します。FFXIVがRPGである以上,戦闘の重要性は高くなります。ただし,PlayStation 3版が発売されれば,そこでMMORPGに触れたことのないプレイヤーも増えることになります。MMORPGはパーティプレイが肝になってきますので,皆さんが遊びやすいものを用意しないと,お互いに連携がとれずにストレスになってしまうかもしれません。

4Gamer:あまりにも複雑なシステムですと,覚えることが多くなりますからね。

吉田氏:ええ。ですので,今回はアクション性を極端に高めるとか,奇をてらったシステムを作ることはしません。自分のキャラクターが成長して新しい技を覚えたら,その強さをしっかり実感できる,基本に忠実なものにしようと思っています。また,パーティ全員の力を合わせて繰り出す「バトルレジメン」という派手な必殺技は残そうと思っています。そして,そのバトルレジメンをファイナルファンタジーシリーズならではのグラフィックスで表現できるようにします。

4Gamer:戦闘シーンを見ればファイナルファンタジーだと分かるようなイメージでしょうか。

吉田氏:はい。それが実現できれば,大きなウリになると考えています。僕は,ファイナルファンタジーを“絆のゲーム”だと思っています。ですから戦闘では,バトルレジメンというキーワードで,プレイヤー同士につながってもらいたいですね。

4Gamer:なるほど。では,次にコンテンツの具体案について教えてください。

吉田氏:ほかのMMORPGでも採用されているシステムですが,ダンジョンに難度選択という概念を取り入れて,繰り返し遊べるようにしたいと思っています。例えば,ノーマルでAというダンジョンをクリアして報酬を手に入れたあと,レベルを上げるために仕方なく何度も同じ場所に通うのではなく,難度を変えて挑戦できるようにするわけです。

4Gamer:これもまた,MMORPGの基本に忠実な変更ですね。難度を変えると具体的になにが変わるのでしょうか。

吉田氏:レベルデザインや仕掛けが変化し,出現するモンスターの強さが変わります。また,アイテムテーブルも独自のものを用意しますので,獲得できるアイテムも変化します。オーソドックスかもしれませんが,同じダンジョンを何度も楽しんでいただくためには,これが最善だと考えています。

4Gamer:ダンジョンが充実するのは,プレイヤーとしては嬉しいと思います。しかし,現状のFFXIVではそもそも一緒に潜る仲間が見つけづらく,そこがストレスになっているように思えるのですが。

吉田氏:それは把握しています。ですので,新たに「コンテンツファインダー」というシステムを用意します。これは,FFXIVに存在するすべてのコンテンツに対して,パーティリクエストが出せる仕組みです。しかも,これは自分のサーバーだけではなくて,複数のサーバーが検索の対象になります。

4Gamer:詳しく教えてください。

吉田氏:例えば,Aというダンジョンに潜りたいと思ったら,コンテンツファインダーのタブを開いて,該当するダンジョンAを選択します。そして,自分のキャラクターのレベルやプレイしたいクラス,プレイ言語などを選択してリクエストを出します。そうするとダンジョンAに行きたいと思っている人の中で,クラスバランスが取れた状態で自動的にマッチングされるのです。しかも,ダンジョンまで自動で移動しますし,クリア後は勝手に戻ってきます。

4Gamer:自動的なマッチングシステムですか? ちょっと伺っただけでも,とても便利そうな……。



吉田氏:いまはダンジョンを例に挙げましたが,とにかくパーティをリクエストするモノに関しては,すべてにおいてコンテンツファインダーで対応できるようにしたいと思っています。しかも,1つのワールドですと,特定のレベル帯で人数が集まらない可能性がありますので,複数のワールドから,それぞれ自分にあった目的のために集まって,また自分のワールドに帰っていくような仕組みにします。
 ここは,かなりグローバルスタンダードを意識して作り込みました。パーティを組めないせいでコンテンツを楽しめないと,そこでやめてしまう人も多くなると思うんです。

4Gamer:サーバーを越えてパーティを組めるんですか?

吉田氏:ええ。いくら素晴らしいダンジョンを作っても,パーティを組んでいただかないと始まりません。そこで,最高のダンジョンを作ったなら,それを十分に味わっていただけるように最高のサポートシステムを用意するという,一貫した流れになっています。

4Gamer:サーバーをまたいでプレイできるということは,ダンジョンは原則としてインスタンスになっていくという認識でいいんですよね。

吉田氏:はい。基本的にはインスタンスで遊んでもらうものだと思って間違いないです。

4Gamer:中にはソロ向けのダンジョンなども?

吉田氏:そこは,バランスが問題ですね。ソロで挑戦できるようにするのは難しくありませんが,例えば,8人でバランスが調整されているダンジョンに,1人で挑戦しても,たぶん敵が強すぎてストレスになるだけだと思うんですよ。ですので,あまり意味がないと思っています。Riftにはありますが,うーん,費用対効果としてどうかなと。

4Gamer:ダンジョンは,コンテンツファインダーでパーティを作って遊んでもらうことが前提なんですね。

吉田氏:そうですね。ただ,僕はコンテンツファインダーを使って遊ぶのが,ソロプレイの延長だと思っているんですよ。同じ目的のプレイヤー同士が自動的にマッチングされるので,「よろしく!」って集まって始めて,敵を倒したら「お疲れさま」って言って終わりですよね。それくらいパーティプレイが気軽なものになると考えています。
 使い方も機能的になっていて,一度でも行ったことのあるダンジョンなら,リストからいつでも選べるようになっています。とても簡単ですよ。

4Gamer:いつでも,どこからでも気軽にダンジョンやコンテンツに参加できるというわけですか。

吉田氏:はい。ログインしてすぐにコンテンツファインダーを開いて,ダンジョンを選んでリクエストを出したら,「ほかの参加者を待っています」といった表示が出ますので,あとは雑誌でも読みながら時間をつぶしていただければ,集まったときに自動的に始まるという感じです。ただし,最初の1回くらいはちょっと冒険をしてもらおうかと思っています。

4Gamer:最初は,ワールドマップを実際に歩いてダンジョンを見つける必要があるということですね。

吉田氏:そういうことです。

4Gamer:なるほど,コンテンツファインダーの仕組みは分かりました。ただ,パーティを組むとチャットがハードルになることもありますよね。PS3版では,みんながキーボードを用意しているわけではないので気軽に参加できると思います。しかし,PC版ではキーボードがありますから,無言でいると,「どうしてこの人はしゃべらないんだろう?」と思われる可能性が高いですよね。コミュニケーションを強いられるケースは,どうしても起きてしまうのではないでしょうか。

吉田氏:そもそも,なぜチャットを強いられることになるかというと,コンテンツに参加する前に,会話が必要になる局面があるからでしょう?

4Gamer:……なるほど。

吉田氏:例えば,僕がパーティリーダーだとします。コンテンツファインダーがない状態でパーティを集めようとすると,友達に「ねえ,今日ちょっとあのアイテムがほしいからBのダンジョンに行きたいんだけど,どう?」という感じで,まず僕から声をかけなければいけません。しかも,その友達が「いいよ」と言ってくれても,4人用のコンテンツならまだ2人足りない。ほかのフレンドがログインしてくれないと,あとはもうシャウトするか,パーティサーチを使うしかない。つまり,知らない人にこちらから声をかけないといけませんよね。

4Gamer:確かに。その“知らない人に声をかける”というハードルは,意外と高いと思います。

吉田氏:さらに,目的が合う人を呼ばないといけません。ただ集めただけでは,参加している理由が分からないんですよ。コンテンツファインダーは,こういったわずらわしさを大きく軽減できるシステムだと思っています。リクエストに,「クリア報酬がほしいから,Bというダンジョンに行きたい」と設定できますので,そこでもう目的が共通化されるんです。目的が一致していれば,この場合は「さっさと敵を倒してクリアする」ことで意見は一致します。しかも,パーティバランスが取れた状態でマッチングされますから,会話の必要がないんですよ。

4Gamer:しかし,それだと逆にコミュニティが縮小する可能性も考えられませんか?

吉田氏:いくら目的が一致しているといっても,パーティを組むなら最初の挨拶くらいはしますよね。チャットするかどうかは,挨拶のあとに会話が続くかどうかじゃないですか。無言なら,ああ,このパーティは無言なんだなと。でも,そのあとによくしゃべるプレイヤーがいるとだんだん打ち解けてくることもありますよね。
 それは,その時々の出会いで,良いと僕は思っているんですよ。まずは出会いの機会を簡単かつカジュアルに用意したいんです。MMORPGって,目的のすりあわせが非常に難しいと思うんですが,そこをファインダーで自動的に行えるのが大きなポイントということです。

4Gamer:目的のすりあわせは確かに難しいですね。そのつもりもないのに,経験値効率を求めるパーティに入ると,例えば「ファイア,ファイア,ファイアで敵を一掃できるでしょ」とか言われちゃうかもしれませんし。

吉田氏:そうですね。テクニックを要求するかどうかでも,パーティの状況は変わってくると思います。効率よくダンジョンを攻略したいとか,高度な連携プレイが必要な場合は,やはり仲のよいコミュニティのほうが良いでしょう。コンテンツファインダーは,とにかく気軽に遊んでいただけたら嬉しいです。ファインダーはパーティ状態でも登録できますので,例えば7人揃っていて,あと1人足りないというときでも,最後の1人だけを探すということも可能です。



気軽なソロ,がっつりパーティ,そしてPvPまで
さまざまな遊び方に対応する


4Gamer:ちなみに,ギルドリーヴのようなソロプレイ用のコンテンツというのもあるんですか?

吉田氏:もちろんあります。プレイヤーがギルドリーヴをクリアするまでの流れは大きく変わりますが,カジュアルに毎日やることがある,というギルドリーヴのコンセプトは悪くないと思っています。ただ,ソロプレイの中心は新たな場所の発見とクエストですね。あと,あまり詳しくは話せませんが,モンスター図鑑のようなものも用意しようかなと思っています。

4Gamer:それは,コレクション要素があるものを追加するということでしょうか。

吉田氏:はい。そういうものをじっくりと集めるのが好きな方には,悪くない仕組みかなと。

4Gamer:では,そのほかにもソロプレイ向けのコンテンツが用意される可能性は?

吉田氏:そのあたりは,まだお話できる段階ではありません。
 でも例えば,今日は誰かとがっつり遊ぶのではなくて短い時間で遊びたいというときもありますよね。獲得していないアチーブメントを取りに行くだとか,埋まってないコレクションのリストを埋めに行くとか,ちょっとクラフトをやってみようかなとか,ソロというのは,要はそういうニーズかなと思っているんです。

4Gamer:みんながみんな,毎日がっつりパーティプレイをする時間があるとは限りませんからね。

吉田氏:そうですよね。少なくとも現行のバージョンは,“すでにあるコミュニティ”を意識していて,どうしてもパーティ向けのコンテンツを多く導入している流れがあります。ただ,パーティを強いられるコンテンツが多いからこそ,カジュアルにソロで遊べるというのは,現在のFFXIVを遊んでくださっているプレイヤーにも有益なはずですから,その部分は膨らませていければと考えています。

4Gamer:さまざまな遊び方に対応できる作品になりそうですね。

吉田氏:ええ。ちなみにクラフトに関してもう少しお話しすると,新生FFIXVでは,ゲーム内のレシピ手帳を充実させる予定ですので,手に入れたアイテムを見るだけで何が作れるのかがすぐに分かるようになります。

4Gamer:それは素直に嬉しいです。今はレシピを自分で調べるところからがクラフトですもんね(笑)。
 では逆に,多人数で参加するバトルコンテンツなどは出てくるんでしょうか。

吉田氏:現行バージョンでは最大8人パーティですが,「FFXI」同様のアライアンスで,8+8+8の最大24人くらいで攻略するダンジョンを用意します。おそらく,そのくらいが今のコミュニティで集められる最大人数かなと。

4Gamer:初期のFFXIVでは,ビヘストがカジュアルに大人数で参加できるコンテンツでしたが,それに替わる大人数で遊べるコンテンツがあるのは個人的にはうれしいです。新生FFXIVにもビヘストはあるんですよね。

吉田氏:よりカジュアルに参加できるものとして生まれ変わります。本気でパーティプレイを行う前の練習用コンテンツといった形になりますね。クエストがあって,ギルドリーヴがあって,カジュアルパーティコンテンツのビヘストがあり,その次に,パーティでのダンジョンプレイがあって,インスタンスでのダンジョンレイドがあって,さらにその上に,アライアンスでのレイドとか,蛮神レイドがあって……という形になります。コンテンツの導線も,ソロからパーティにという感じに設定されています。

4Gamer:なるほど。ほかにも,PvPが入る予定だと聞きました。

吉田氏:入れます。PvPはできるだけ本格的にやりたいと思っています。

4Gamer:PvPといえば確か,吉田さんは「Dark Age of Camelot」のコアプレイヤーだったんですよね? 凄腕だったと風の噂で聞いたことがありますよ。

吉田氏:上には上がいるので,僕より凄腕はたくさんいましたよ(笑)。でも去年,当時の開発チームと話をしたら,キャラクターが知られてはいましたね。

4Gamer:悪名高い(笑)。

吉田氏:いえいえ,敵からは「あいつらチートだ」とか言われてましたけど,Hiberniaでは救国の戦士ですから! 53人の敵に対して,8人で13分間戦い続けて,最終的にはポーションが尽きて死んだなんてこともありましたね。懐かしい……,海外のプレイヤーと罵り合いながら戦っていましたよ。日本の時間の昼休み頃に1時間だけPvPに出撃して,海外強豪ギルドを倒す動画を作って公開してみたり。

4Gamer:完全に廃ゲーマーじゃないですか! しかしそうなると,新生のPvPもかなりのものになりそうですが。

吉田氏:いえ,そんなことはありません。力を入れているというか,PvPって単に殴ることができればいいというわけではなく,バランスがすべてですから,ある種天秤のような役割を果たしてくれると思っています。
 そもそも,PvPにのめり込むプレイヤー層っていうのは,多くて全体の10~15%程度ですから,ビジネスという意味だけでの数字で見たらそこまで重要ではないんです。ただ,それがあることで,どんどんアイテムが消費されて,生産が生きてきたりするんですよね。エンドコンテンツですよね,まさに。

4Gamer:確かに活性化はするとは思いますね。

吉田氏:ですから,ゲーム全体を長生きさせて,より深く楽しく遊んでもらうためにPvPは必須だと思っているんです。要するに,僕自身がやりたいというよりは,MMORPGのグローバルスタンダード化の一環として盛り込む必要があると思っています。


今度はチョコボも一緒に戦う?
育成の方針とRPGにおけるプレイヤーの役割


4Gamer:では,次にキャラクターの育成についての方針を教えてください。

吉田氏:育成については,現行バージョンと同じように,アーマリーシステムというものを最大限に活用していきます。もはや,1つのクラスを選んだら一生そのクラスを続けてください,ではしんどいかなと。また,せっかく用意されているさまざまなコンテンツを,いろんなジョブやスキルで味わえないのはストレスになりますし,お金を払っていただいているのに,「あれを遊びたいんだけど大変」というのは,ほかのエンターテイメントと比べても,ちょっと厳しいと思います。

4Gamer:あらゆるコンテンツに参加しやすくするためのアーマリーシステムというわけですか。

吉田氏:ええ。その時々に応じてロールを変えるアーマリーシステムというのは,今の世代のプレイヤーにマッチしていると思っていますし,そのシステムを活かしたコンテンツをこれからも用意していこうと考えています。これは,新たに「FFXIV」を始める方にとっても優しいシステムだと思うんですよ。



4Gamer:レベルアップのスピードについてはどのようにお考えですか?

吉田氏:レベル20くらいまでは,クエストをやって新しい発見をしていると自然にレベルが上がっていくという流れを想定しています。
 そのあたりまでは無理にパーティを組んでもらわなくても大丈夫だと思っていますので,ソロでいろんなことをやっていたらレベルが上がって,アイテムも揃って,足りないところはNPCとかマーケットを覗いて買っていただいて,それからゆっくりとビヘストを通じてパーティプレイに慣れてもらって……という導線を考えていますので,序盤を苦しくするつもりはないですね。

4Gamer:なるほど。

吉田氏:あ,あと新しい育成要素としてはチョコボを育てて,一緒に戦うといったものもあります。

4Gamer:なんと。ほかのMMORPGで言うところのペットみたいなものですか?

吉田氏:僕達は“バディ”と呼んでいます。現行のチョコボって,乗り物として機能するだけの存在になっているんですけど,例えば名前を付けて荷物を預けることができるとか,そういったものになります。さらに,スキルを振って,タンク仕様のチョコボやキャスター仕様のチョコボに育てるとかいったこともできます。騎乗状態で一緒に戦うのではなくて,降りて戦っていれば,チョコボがケアルをしてくれたり,自分がタンク役で前に出ているときにキャスターで後ろから攻撃してくれたりするわけです。

4Gamer:チョコボにもジョブみたいなシステムが用意されるんですか。

吉田氏:はい。どんなチョコボに育てようか,大いに悩んでいただければと思います(笑)。何を着せようかなとか,見た目はこっちなんだけど,パラメータ的にはこっちなんだよなとか。

4Gamer:それはまた,だいぶ頭を抱えることになりそうです……。
 しかし,チョコボは今の仕様からは随分と変わるんですね。



吉田氏:やはり,僕達にとってもファイナルファンタジーにおけるチョコボって非常に大切なんです。なので,単なる乗り物ではなくて,自分なりに育てていける“相棒”という考え方でやっていきたいと思っています。成長は,何もキャラクターに限ったことではありません。こういう考え方は家庭用ゲーム機で育ててきた文化ですので,大事にしていきたいなと思っています。例えば,それが最終的にはハウジングに結びついたりすれば,より楽しんでいただけるんじゃないかなと。

4Gamer:期待が高まりますね。
 ところで先ほど,ソロプレイ向けのコンテンツを膨らませていきたいというお話がありましたが,新生FFIXVにおけるメインクエストは,ソロだけでクリアできるようにするんでしょうか。

吉田氏:最初のあたりはソロでもクリアできるバランスにしようかと考えていますが,最後のほうのクエストに関して言うと,原則としては,パーティプレイを要求するような形にしようと思っています。

4Gamer:オンラインゲームである以上,やっぱりそこは外せないと。

吉田氏:そうですね。最近のMMORPGなどでは,NPC達が一緒に戦ってくれることによって,「オンラインゲームなのに1人で最後まで遊べる作品」まで生まれてきていますが……。

4Gamer:それはそれで何かが違うような気はします。

吉田氏:少なくとも,僕がMMOのファイナルファンタジーを作るなら,それは違うかなと。さきほども言いましたが,ファイナルファンタジーは“絆のゲーム”だと思います。その意味でも,最後はやはり,みんなの力を集めて世界を救うというものにしたいんです。しかも本作は,自分がヒーローになれるファイナルファンタジーなわけですからね。

4Gamer:その,自分がヒーローになれる感覚こそがファンタジーRPGの肝ですもんね。

吉田氏:それをMMORPGで実現するためには,コンテンツファインダー機能が必要不可欠でした。ファインダー機能が搭載されて初めて,プレイヤーは同じ目的を持った他人を簡単に見つけられるようになります。パーティプレイをストレスフリーで遊べるようになるわけです。

4Gamer:では,安易にソロができるほど簡単にはしない方向ですか。

吉田氏:もちろん,序盤ならば,自分のレベルよりちょっと低い推奨レベルのダンジョンを選択すれば,パーティを組まずともやっていけるようにはします。一方で,強大な敵に立ち向かうときには,ちゃんとパーティを組んでほしいわけです。
 だって,ゲーム中の戦いをドラマチックなものにしようと思ったら,ある程度は敵が強くないと達成感もなにもないじゃないですか。全部ソロで終わってしまうMMORPGでは,やっぱりファイナルファンタジーに向かないと思うんです。
 序盤はソロでも十分楽しめるけれど,だんだんと仲間が必要になってくる。仲間を集めるシステムはちゃんと僕らが用意しますので,「ぜひ,みんなで力を合わせてヒーローになってください」と。そういうポリシーでやっていくつもりです。

4Gamer:私は最初におっしゃっていた“最高のストーリーを体験できるRPG”とMMORPGって,もの凄く相性が悪いというか,矛盾してしまうところがあると思うんですよ。

吉田氏:と,いいますと?

4Gamer:RPGというのは言葉のとおり役割を果たすことをとおして,ストーリーに没入していくものですよね。そこに他人が介入してくると,役割があやふやになって,没入しづらくなってしまいます。最高のストーリーという観点からすると,パーティプレイって必要ないんじゃないかと思う節すらあります。

吉田氏:そこに関しては,僕はちょっと考えが違いますね。パーティを組んでほかのプレイヤーと一緒に遊んでいても,戦いの中で自分にふさわしいロール(役割)を果たすことができれば,そこはちゃんと「自分がヒーローだ」「主人公だ」という感覚は実現できると思います。

4Gamer:なるほど。

吉田氏:「ドラゴンクエスト」シリーズで顕著なんですが,あの「みんなが徹底的に勇者だと認めてくれる感じ」はとてもいいなと思っています。だからプレイヤーは頑張れるし,自分自身の役割に意義を見出せるのです。

4Gamer:でも,それはシングルプレイならではの話じゃないですか? パーティプレイでは,みんなが勇者になろうとするわけですから,やはり意義を見いだしにくいような。

吉田氏:そこはやっぱり“役割”をどう認識させるかだと思います。MMORPGの場合は,回復のスペシャリスト,タンクのスペシャリストといったように,パーティ内に自分がいる意味を見いだすことができます。そういう意味では,ファインダー機能でパーティを見つけ,そこに参加するというのも,自分の“役割”を認識するのに役立つでしょう。そのパーティに必要とされて参加するわけですから。
 また,戦闘でヒーローになることがすべてではなく,例えば,クラフターを極めて経済面での役割を見出すのも,1つのヒーロー像としてアリだと思いますよ。


グラフィックスは美麗ながら高速化
カスタマイズ次第でロースペックPCにも対応


 ここで,最新の実機デモを見せてもらった。吉田氏の話によると,グラフィックスの完成度は85%くらいで,キャラクターと水のシェーダ周りの調整が残っている状態とのことだった。最適化に関しては15%くらいしか進んでいないとのことだったが,それでも現行バージョンより圧倒的に軽いとのこと。デモで使われていたのは,昨年発売の比較的ハイエンドなノートPCだった。※記事内のSSは,デモ版のものではありません


吉田氏:グラフィックス設定は,LODがすべてオフ(※),シェーダ4枚,リアルタイムライティングをすべてかけている状態ですので,最高水準と思っていただい構いません。それが,最適化前の段階でここまで動いています。

※LOD(レベルオブディテール):カメラからの距離に基づいてCGのポリゴン数が削減される度合い。「LODがすべてオフ」は,すべてのモデルにおいてポリゴン数が削減されていない最高品質の状態を意味する

4Gamer:サーバーにつながっていないので戦闘はできないようですが,攻撃時の挙動は改善されるんですか?

吉田氏:今は“もっさり”といわれている部分ですから,当然気になりますよね。実は,現行バージョンでは,1つのアニメーションが完了しないと次のアニメーションが再生できないんです。そこも新生FFXIVではすべて作り直していますから,レスポンスに関してはかなり改善されていますよ。

4Gamer:動作の割り込みもできるようになると考えていいんですよね。

吉田氏:できるようになります。今回は新たにアニメーションをブレンドする仕組みを作りました。あとはどこまでの「無茶な動きの割り切り」を許容するかですね。やはり僕が好きな海外タイトルほどファイナルファンタジーのファンの方は割り切ってはくれないので,どれだけ絵を崩さずブレンドできるかの試行錯誤を続けていますよ。


スクリーンショット右下の小さなドットは,インベントリの中身が縮小表示されたもの。アイテムは種類ごとに色分け表示されるので,インベントリを開かずとも一目でどんなものをどれくらい持っているかが分かるようになっている


4Gamer:なるほど。プレイフィールはかなり変わってくると捉えておいてよさそうですね。

吉田氏:ええ。あと,新生FFXIVのαテストではキーボードとマウスによる操作を重視したいと思っています。現行バージョンのサービス開始時には,とくに海外のプレイヤーから,そこの操作性が信じられないほど悪いと言われてしまいましたから。

4Gamer:確かに操作性についてはいま一つだな,と思っていました。アクションパレットの切り替え一つとってみても,Shiftキー+矢印キーで,マウスから手を離す必要がありますし。

吉田氏:現在,多くのMMORPGは「World of Warcraft」(WoW)のユーザーインタフェースを基準に作られています。要するにWoWはMMORPGのグローバルスタンダードなんですよね。FFXIVでも,まずはそのレベルを達成して,ほかのMMORPGからFFXIVをやってみようかなと思ったときに,すんなりと入ってこれるようにしないとダメだと思っています。  そのためにも,まずはマウスとキーボードでの操作からしっかりとプレイヤーの方に試してもらいたい。オンラインゲーム好きの方なら,何も言わなくてもW/A/S/Dに手を置くじゃないですか。[B]や[I]を押せばインベントリが開いて。新生FFXIVのUIは,そのあたりを考慮しつつ,すべて再構築しています。

4Gamer:なんだか,逆に現行バージョンから引き継いでるモノが見当たらないですよね。まったくの別物といいますか。

吉田氏:そうですね。お見せしているのはグリダニアを出てすぐのマップですが,見てのとおり現行バージョンの影も形もありません。やはりアップデートだけではどうにもならなかったので,マップも全部作り直しました。

4Gamer:スクリーンショットを見ても思いましたが,こうやって動いているものを見ると,グラフィックスのクオリティはかなり上がっているように思います。まぁ,サービス開始当時のFFXIVも,グラフィックスに関しては評価が高かったわけですけれど。

吉田氏:ただ,要求スペックが高すぎました。あれでは多くの方にプレイしてもらえない。ですから,今回はカスタマイズ性を高めました。シェーダの数やミップマップの解像度を調整し,LODの距離や品質までプレイヤーが変更できるようにします。スペックの低いPCでも,とにかく自分の周りだけハイモデルになるように設定すれば,美麗さは損なわずに快適なプレイができると思いますよ。

4Gamer:MMORPGはあくまで自分中心ですから,まずは最低限,自分の周りが綺麗に見えていることは大切ですよね。

吉田氏:ロースペックPCでも快適に遊べるようにするというのは新生FFXIVの1つのテーマで,これはPS3版にも当てはまることなんですよ。例えば,公開した最新スクリーンショットの画質を完全に維持したままPS3で動くかというと,それは難しいです。圧倒的にメモリが足りません。でも,PC版とほぼ区別が付かない程度のレベルで動くことは保証します。そのために作った専用のエンジンなんですから。

4Gamer:人がたくさん集まっているところでも,画質を落とさずにプレイできるんですか?

吉田氏:いえ,そこはとにかく数をたくさん出すことを意識しました。どんなに美しいキャラクターを見せられても,現行バージョンのように40体くらいしか表示できないのでは,MMORPGとしては致命的です。今回はメモリが尽き果てるまでキャラクターを表示しようとしますが,その代わりにフレームレートが落ちるようになっています。人が多くて「重い!」と感じるのもMMORPGならではの体験でしょう?

4Gamer:言われてみると,確かにあの重さには慣れている部分があるかもしれませんね。重いよなぁと思いつつも,人が多くて盛り上がっている感じが伝わってくるというか。

吉田氏:現行のバージョンでは,重いだけで人が表示されませんから。「よく分からないけど,たぶん,人が一杯いるんだよね……」と。それじゃ寂しいんですよ。新生FFXIVではサーバーシステムも全部作り直しましたから,もっと多人数でプレイすることの楽しさを実感してもらえると思います。


FFXIV開始当時につまずきの主要因となった
ゲーム序盤の導線を改善


4Gamer:さて,ここまで新生FFXIVについてたくさん伺ってきて,個人的には非常にワクワクしています。本当に大きく生まれ変わるようで,楽しみです。

吉田氏:ありがとうございます。

4Gamer:ただ,このワクワク感はかつてFFXIVのサービスが開始される直前に,きっと多くのプレイヤーが持っていたはずです。そして,そういうプレイヤーにとって,今やこの感情は不安を伴うものになっている可能性があります。
 コンテンツは拡充される,ユーザーインタフェースが改善されるといっても,例えば現行バージョンでは,初心者にとってのハードルが高いといった問題もありましたよね。そのあたりは,改善されるんでしょうか?

吉田氏:現行のバージョンの導線の弱さについては十分に認識しています。
 パッチ1.19では改善されていますが,お恥ずかしい話,僕は序盤の「インスタンスから外れます」というメッセージを初めて見たとき,「デバッグバージョンか,これ?」と思ったくらい厳しかったです。そもそも,初心者の方にインスタンスという言葉が通じるわけがないですし……。

4Gamer:思い返せば,ログアウトすらどうやったらいいか,最初は分かりづらかったような気がします。

吉田氏:……面倒だからとウインドウを強制的に閉じようかと思ったら「サーバーに情報がセーブされないおそれがあります」と表示されて「よろしいですか?」って聞かれても,「いや,いいわけないだろ」ってなりますよね。
 僕がFFXIVの仕事を引き受けて,初めてプレイしたときの印象がそれでした。

4Gamer:はっきりと聞いてしまいますが,吉田さんもサービス開始当初のFFXIVは問題があると思ったんですね?

吉田氏:はい。問題があるというか,「信じられない」が正直な感想で。「えらい仕事を引き受けたな」と思いました。

4Gamer:それを聞いて少し安心しました。ゲーム序盤は,とにかく導線がまったくない。覚えていくことは山のようにあるのに,説明はなく,とにかくやってみてください,自分で覚えてくださいというものばかりで,そこに開発者が意識を向けてくれないんじゃないかと不安だったんです。

吉田氏:そこは僕がとくに致命的だと思っている部分ですので,PlayStation 3からもプレイできる新生FFXIVでは導線にかなり力を入れています。没入感を大事にして,遊びながらゲームのシステムを覚えられるようにします。
 チュートリアルであっても,あくまで目の前のコンテンツをやってみると,「あ,こんなことができるんだ,あんなこともできるんだ,そして報酬も用意されていて,気がついたらある程度装備が整っていた。MMORPGって思っていたより簡単だ」と感じてもらえる,そういうものになるように作っています。

4Gamer:しかし,それだけ重視しているなら,現行バージョンに反映されていないのはなぜでしょうか。

吉田氏:これは順を追って説明しましょう。
 サービス開始当初,そこでつまづいてしまった多くの方は,僕が担当した頃には,残念ですがもうやめてしまっていました。今も,プレイしてくださっているのは,そういったものを乗り越えたオンラインゲーム上級者や,FFXIVを愛してくれている方々です。

4Gamer:おっしゃるとおりだと思います。

吉田氏:僕がこの仕事を引き受けたとき,何よりも先に必要だったのはコンテンツでした。遊んでくれているプレイヤーに,今すぐにでも楽しめるものや,パーティを組む動機を提供しなければいけなかった。
 でも,今度はバトルシステムが今度は問題になりました。戦略が立てられないバトルになっていて,連携も戦術もへったくれもありませんから,面白いコンテンツが作れない。それなら,まずはバトルから手を入れなければ……でも,ユーザーインタフェースがひどいとバトルも楽しめない……,という風に優先順位を考えました。
 あの当時は,僕が舵取りをミスすると,さらに間違った方向に進みかねない状態でした。もしあのとき,序盤の導線改修に力を入れていたら,むしろプレイヤーはいなくなっていたと思います。

4Gamer:確かに,吉田さんが携わるようになってから,クラスやスキルといった戦闘関連は大きく変わりましたね。

吉田氏:ええ。あれだけの酷評を受けて,そうそう新規の方が入ってくるとは思えませんでしたので,とにかく今,ゲームを支えてくれているプレイヤーをいかに楽しませるかということを考えユーザーインタフェースとバトルの根本改修を優先しつつコンテンツとして形にしたのが「バージョン1.19」ですね。序盤については最低限,本当に最低限の整理をさせてもらって,少なくともMMORPGをやっている方だったら,なんとか通れるくらいになっていると思います。それが現行バージョンなんです。

4Gamer:なるほど。現行バージョンがどうしてあのような形になっているのか,やっと合点がいきました。

吉田氏:新生FFXIVでは,現行バージョンで手を入れきれていない部分こそ,徹底してやっていきます。新規の方にアピールするため,コンテンツの拡充や派手な演出といったところにも力を入れなくてはいけませんが,どれも手抜きをするつもりはありません。楽しみにしていてください。


ファイナルファンタジーらしさとは
共通するイメージを組み込むこと



4Gamer:それではそろそろお時間のようなので,最後に,吉田さんが最高のストーリーを提供するうえで大事だとおっしゃっていた,ファイナルファンタジーらしさをどのようなものだと考えているのか,教えていただけますか。

吉田氏:それは,スクウェア・エニックスのものではなくて,プレイヤーのものだと思います。最終的には,FFというのは一人一人が持っているキーワードの集合体じゃないでしょうか。例えば,クラウドだったりチョコボだったり,モーグリだったりと,人によって最初に連想するものは千差万別ですが,どれも共通項を持っている。

4Gamer:魔法のケアルやファイアを思い浮かべた場合でも一緒ですね。

吉田氏:まぁ,このほかにもイフリートは最初に戦う召喚獣だよねとか,今回もシドが登場するけど,どんな形で出るんだろうって誰もが考えます。ファイナルファンタジーの正体はこれですよ。この,プレイヤーが共通してもっているイメージっていうのをちゃんとゲームに組み込んであげることが,ファイナルファンタジーらしさにつながっていくと思います。

4Gamer:新生FFXIVでも,そういうフィーチャーがあるんでしょうか。

吉田氏:ちょっと違うかもしれませんが,クリスタルタワーというコンテンツが近いでしょうか。これは「FFIII」のラストダンジョンの名前なんです。FFXIVはオンラインゲームという性格上,いろんな世代のFFファンが入ってきてくれていますが,クリスタルタワーという単語への反応は人によって違うと思うんですよ。僕と同世代の方なら,「ああ,あのセーブできなかったところね」となります。ところが……。

4Gamer:FFIIIを遊んでいない若い世代の方がにとっては「これって何なんですか?」という状態になるわけですよね。

吉田氏:そのとおりです。そこで,「このダンジョンは大変だったんだよ」「セーブできないってありませんよね」「移植版が出てるから,遊んでみなよ,ひどいから(笑)。でもな,あれが燃えるんだよ!」というのを,プレイヤー間で話せるのは非常に大切だと思うんですよ。もちろん,FFXIVにはオリジナルな世界があって,独自のコンテンツも入っていきます。ただ,これの前に13個の世界が存在していたのも確かですから,そのエッセンスもどんどん入れていきたいと思っています。

4Gamer:クリスタルタワー以外にもそういうエッセンスは入ってくるんでしょうか。

吉田氏:ええ。例えば,新生FFXIVから出てくる魔導アーマーは「FFVI」のデザインになっていたりします。これは媚びているわけではなく,プレイヤーの皆さんに絶対喜んでもらえると思うからこそこうしたんです。そういうファンサービスのできるタイトルでありたいというのも,僕の考えているファイナルファンタジーらしさの一つにつながっています。

4Gamer:なるほど。では,プレイヤーが共通言語として持っている要素は,どんどん入れていくわけですね。

吉田氏:それはもう徹底的に入れていきます。分かりやすいファイナルファンタジーらしさで。たぶん,それが一番望まれているんじゃないかと思うんです。

4Gamer:楽しみです。それでは新生FFXIVを待っている方,そして今のFFXIVを支えているプレイヤーに向けて一言お願いします。

吉田氏:新生FFXIVでは,最初にお話しした3つの柱,最高のゲームプレイと最高のストーリーと,最高のグラフィックスを用意します。そして,この上に皆さんがコミュニティを築いてくださって初めて,FFXIVは最高のゲームになります。ですからまずは,3つの柱を味わうために,ぜひ一度新生FFXIVに触れてみてください。皆さんをこの世界に招待できる日が来るのを,今から待ちきれません。

4Gamer:本日は,ありがとうございました。



 インタビューの中でも出てきたとおり,新生FFXIVは新たなサーバーとクライアントを用い,ユーザーインタフェースやマップ,モデルなど,あらゆる要素を再構築して大きく生まれ変わろうとしている。サーバーを越えたマッチングシステム「コンテンツファインダー」や,共に戦うチョコボ(バディ)の育成など,吉田氏が話してくれた新要素の数々も,新生FFXIVへの期待を高めてくれる。

 「ウルティマ オンライン」の時代からMMORPGをやり続けてきたという吉田氏は,自身が生粋のオンラインゲーマーだからこそ,プレイヤーにとって何が大切なのかを重要視している。サービス開始当初のFFXIVについて,きっぱり“信じられない”と答える吉田氏ならば,新生FFXIVを多くのプレイヤーが楽しめる作品へと導いてくれるはず。

 今回のE3 2012で,リリースに向けていよいよ具体的な形が見えてきた新生FFXIV。デモやムービーの正式な公開こそ見送られたが,今夏には何らかの形で動く物が見られる可能性は高いとのこと。実際に触れられるαテストやβテストの日程も,そろそろ気になってくる時期だ。



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※この記事は、4Gamer.netより提供された情報をもとに、テレビ朝日が改変・編集し掲載しています。元記事はこちら

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