[E3 2012]「Xbox SmartGlass」って何なのだろう? MSの開発者にじっくり話を聞いてきた

  • 更新日:2012年6月11日

 E3 2012において,「Xbox Live」サービスの今後の目玉として発表された「Xbox SmartGlass」(以下,SmartGlass)は,日本では馴染みのないサービスと提携していることも相まって,まだまだ謎めいた新フィーチャーと思われているかもしれない。  SmartGlassは,ユーザーの所有するスマートフォンやタブレット機を使って,ビデオ,音楽,ゲームといったエンターテイメント,そしてリモコン操作の用途を拡充させることで,ビデオや音楽,ゲームといったエンターテイメントにリッチコンテンツを提供できるようにする技術である。

 今回,E3 2012の事前に行われたイベント「Xbox 360 Media Briefing」会場で,さらに詳しいサービスの概要を,ソフトウェアのアーキテクトであるピーター・ウィリアムズ(Peter Williams)氏,およびエンターテイメントサービス部門の広報を担当するホセ・ピネーロ(Jose Pinero)氏にじっくりと聞いてきたので,その内容をお届けしたい。


Xbox SmartGlassのアーキテクト,ピーター・ウィリアムズ氏(左)と,エンターテイメント部門広報担当のホセ・ピネーロ氏


エンターテイメントの体験を拡充するSmartGlass



 まず強調しておかなければならないのは,このSmartGlassは,Xbox Liveのゴールドメンバー専用のサービスではなく,無料のアプリとして利用されるものであるということだ。正式サービスが始まれば,Xbox 360のメニュー画面および「Windows 8」デバイスのタイルが自動リフレッシュされるようになるが,このサービスを利用するかどうかはあくまでユーザー次第。
 画期的なのは,Windowsデバイスばかりでなく,iOSやAndroid系デバイスにも無料アプリをリリースするということだ。つまり,この“エコシステム”をリビングルームに構築するために,新しいデバイスやソフトウェアを買う必要はないのである。


 今回のデモで行われていたのは,アメリカの人気テレビドラマ「Game of Thrones」を使ったものだった。Xbox Liveからダウンロードされた登場人物の多いドラマを利用して,シーンの1つ1つが,その世界のどこで行われているのかをリアルタイムで表示するマップを,鑑賞用のエクストラコンテンツとして利用できることが示された。
 このほか,キャラクター達の家系図を見たり,ディレクターや役者達によるコメントを表示したりといった機能だけでなく,その前後のエピソードの情報を確認して購買したり,役者が出演するほかの作品を調べ上げたりといった,さまざまなオプションが提示されていた。



リモコンとしてXbox 360をリビングルームの中心に



 興味深いのは,テレビとSmartGlass搭載デバイスに映し出される映像は,相互に交換できるという点である。例えば,友人とテレビを見ているときに,「あれ,このキャラクターって誰だっけ?」となった場合,デバイスで情報を調べて大画面に映し出す,などということが可能になるかもしれない。また,キッチンやバスルームなど,テレビから少し離れた場所に行く場合には,タブレットなどにXbox Liveのコンテンツを移し変えて持ち出せばよいわけだ。

 これらのデバイスは,Xbox Liveのアカウントにつき最大4台までサポートできるとのことだ。映画だけでなく,チャンネルの操作や音楽の検索,再生なども可能であり,SmartGlass搭載デバイスは“スマートリモコン”へと変化する。さまざまなコンテンツに加えて,リモコン操作の用途を拡充させることで,Xbox 360機を“オールウェイズオン”型のリビングルーム必須アイテムに変えるのである。



ゲームでも,さまざまな用途に利用できるSmartGlass



 もちろん,このSmartGlassはゲームにも応用できる。ピネーロ氏が紹介したのが,マイクロソフトが「Xbox 360 Media Briefing」で発表したばかりのアクションゲーム「Ascend: New Gods」だ。この2013年にリリースされる予定のアクションRPGでは,SmartGlassを使うと,プレイヤーは手元のデバイスを利用してモンスターキャラクターのデータを調べたり,自分のインベントリを覗くことができるようになる。ミニマップも表示でき,普通のゲームにあるようなメイン画面上よりもハイクオリティなマップで自分の居場所を確認できる。



 また,今回のデモではウィリアムズ氏はカラオケサービスのデモも行い,カラオケやダンスゲームでは,その曲が終わる前に別の人が次の曲を入力しておくという,日本人には馴染み深いシステムの紹介も行っている。このSmartGlassを利用したマルチスクリーン化は,こうしたちょっとしたサービスにも生かされるということだ。



 そのほか,詳細は公開されなかったものの,ピネーロ氏はXbox Live向けにリリースされるらしい「Home Run Stars」という野球ゲームについて言及し,これは2人のプレイヤーが楽しむ対戦型のゲームになり,ローカルで楽しむ場合は,1人のプレイヤーがメインスクリーンで攻撃側としてバットを振る傍ら,守備側のプレイヤーはピッチャーの投球を,タッチスクリーンのデバイスを利用して細かく調整することも可能になるという。このあたりは,Wii Uの対抗馬ともなり得る機能であろう。  Xbox SmartGlassについては,そのローンチ時期や日本での展開についての正式発表も行われてはいないものの,Media Briefingの際には「Halo 4」や「Madden NFL 13」のデモも行われており,北米ではそれほど遠くない時期にサービスが開始されることを思わせた。また,「Game of Thrones」のHBO(パラマウントピクチャーズ)だけでなく,ESPN,NHL,NBAなど,複数の企業や団体との提携を発表しており,さらには北米の最大ケーブルネットワークサービス「XFinity」との提携により,Xbox Liveでケーブルテレビが視聴できるようにするなど,かなりアグレッシブにサービスを拡大している。  もちろん,こうしたSmartGlass向けのサービスを行うには余分な経費がかかるわけで,ストリーミングしたドラマやゲームの内容を拡充したところで,どれだけ費用対効果があるのかなどは未知数である。ただし,こうした総合エンターテイメントで複数のディスプレイを利用することが一般化していくことも十分にあり得るだけに,今後,ゲーム業界だけでなく,家電業界やエンターテイメントのあり方を占ううえでも,非常に重要なサービスになりそうだ。


※この記事は、4Gamer.netより提供された情報をもとに、テレビ朝日が改変・編集し掲載しています。元記事はこちら


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