[E3 2012]グリーはE3をどう見たか。グリー海外展開のキーマン・荒木英士氏に聞いたE3出展の手応え
- 更新日:2012年6月8日
昨今、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで快進撃を続けるソーシャルゲーム大手のグリー。今回の「E3 2012」では、コンシューマゲームがメインの見本市「E3 2012」に、大々的な出展を果たしている。
国内のみに留まらず、いよいよ海外へも打って出ていく姿勢を見せる同社だが、4Gamerでは、そんなグリーの米国法人GREE Internationalのシニア・バイスプレジデントを務める荒木英士氏に話を聞く機会を得た。グリーがE3に出展した意図とはどんなもので、そしてグリーからはE3(コンシューマゲーム業界)がどう見えたのだろうか?
4Gamer:本日はよろしくお願いします。まず、荒木さんの簡単な略歴からお聞かせいただけますか。
荒木英士氏(以下、荒木氏):はい。私は、それこそGREEがPCベースのサービスだった頃からの社員の一人で、PCからモバイルへシフトする際の取り組み、ソーシャルゲーム事業の立ち上げなどさまざまなプロダクトの開発に携わってきました。2010年くらいからは、主に海外向けの施策中心に携わっていまして、北米での拠点立ち上げや北米向けゲームの開発、最近でいえば、Funzioの買収(※)の案件などを担当しました。
※Funzioとは、米国の有力モバイル向けゲーム制作会社の一つ。5月2日にグリーにより買収されることが発表された。買収額は約2億1000万ドル(約169億円)。
4Gamer:Funzioの買収もそうですし、今回のE3出展もそうだと思うのですが、やはりグローバル市場での展開にはかなり力を入れていくのでしょうか。
荒木氏:はい。僕らがE3に出展させていただいた理由もまさにそこです。というのも、おかげ様で当社も、日本ではそれなりに知名度も上がって、いろいろなメーカー様とやりとりをさせていただくようになりましたが、正直なところ、海外ではまだまだというか、これから挑戦する立場ですよね。ですから、僕らがこれからGREEのプラットフォームをグローバル市場で展開していくうえで、世界のデベロッパーさん達に当社を知ってもらわなければなりません。そして彼らにも、僕らのプラットフォームにコンテンツを提供していただきたい、また弊社がそれをサポートしていきますというのを、企業のメッセージとして発信したいと思ったわけです。
4Gamer:なるほど。ちなみにE3以外のゲームショウなどでも出展を検討しているんですか?
荒木氏:ええ。いま検討しているものでいうと、ドイツのGamescomや中国のChinaJoyだとか、各国の主要なゲームショウではどんどん出していこうと考えています。GREEのプラットフォームをグローバルでやっていくからには、まず各国の会社さんに知っていただかないといけませんからね。
4Gamer:話をE3に戻してしまうのですが、出展してみての手応えというか、海外のメーカーの反応はどういったものだったのでしょうか。
荒木氏:今はゲーム業界自体がコンシューマからオンラインへと移行していく過渡期だと思うんですけど、そのなかで、モバイル専業でやっている僕らが大きなブースを出すというところで、大きな関心を持っていただけているようです。
4Gamer:具体的な商談というか、海外メーカーからの質問はどういったものが多いのでしょう。
荒木氏:やっぱり、「僕らもこれからモバイルでやろうと思うのだけど、どうすればいいのか」「モバイルで展開するにあたって、グリーはどういうサポートをしてくれるのか」みたいなご相談が多いですよね。北米は、ゲームの先進国ではあると思いますが、ことモバイルゲームに関しては、日本に一日の長がありますし、そこは僕らにアドバンテージがある部分なんだなと逆に再認識しました。
4Gamer:日本のモバイルコンテンツ市場って、世界のなかでも特筆して成熟している(規模が大きい)ところですよね。
荒木氏:そうなんですよね。日本では、それこそフィーチャーフォンの時代から、ゲームや音楽の配信サービスがかなりの規模で展開されてきましたが、北米やほかの国では、モバイルコンテンツの市場はこれまでほとんどありませんでした。日本のように高性能な機器が出回ることもなかったですし、環境がそもそも整っていなかったんです。
4Gamer:それがスマートフォンの普及で事情が変わってきた。
荒木氏:はい。スマートフォンはWebブラウザにしろOSにしろ、一定の規格で統一されていますからサービスやコンテンツがとても展開しやすくなりました。ようやく昔の日本(のモバイルコンテンツ市場)に近い環境になってきたのだと思います。
4Gamer:その意味で、海外企業のモバイルコンテンツ(ソーシャルゲーム)に対するモードというか、姿勢って、日本とは違うところがあったりするのでしょうか。
荒木氏:ソーシャルゲームのプラットフォームとしても、これまで北米ではPCがベースでしたので、各社ともこれからモバイルへの取り組みを本格化させるという印象を受けます。今、いろいろなメーカーさんにお話を伺っているのですが、モバイルソーシャルゲームの作り方を理解されているところはそんなにないのではないかと感じています。
4Gamer:海外のメーカーといえば、先日、2KGamesとの提携が発表されて、「Civilization」や「Pirates!」などが提供されると報道されましたが、何かグリーさんのほうから「モバイルではこうしたほうがよい」といったサポートなりアドバイスってされていくのでしょうか。
荒木氏:個別のタイトルに関しては、ちょっと今この場ではお話しできないのですが、弊社の全体としての取り組みの話をしますと、企画面・技術面・マーケティングなど幅広くサポートする体制を構築しております。
世界戦略は手探り中?
4Gamer:ちょっとE3自体からは話がずれるんですけど、グリーさんから見て、ゲーム会社各社のソーシャルゲームに対する取り組みはどう見えているんですか。
荒木氏:コンソールゲーム業界、モバイルゲーム業界、PCソーシャルゲーム業界などさまざまな方面からモバイルソーシャルゲームに参入してこられています。
4Gamer:ソーシャルゲーム市場のプレイヤー(参入企業)でいうと、PCオンラインゲーム会社やWeb会社もいますしね。
荒木氏:そうですね。ただ、ゲームの設計というか、作り方みたいな部分で言うと、やっぱりPCでオンラインゲームを作ってこられたような会社さんは、凄くちゃんと理解して取り組まれているな、という印象はあります。
4Gamer:今は、いろんなところから参入が相次いでいる状態だと思いますが、次のソーシャルゲームはどういう形になるんでしょうね。当面は、やっぱりブラウザゲームなどが主流になるんでしょうか。
荒木氏:地域によってユーザ層は違うと思います。スマートフォンの普及が初期段階の地域においては、ビジネスマン層が多かったりする場合もありますし、PCソーシャルゲームと同様モバイルも主婦層の利用が多いというデータもあります。グリーとしては、各地域・各ユーザ属性に向けてそれぞれゲームを提供していきたいと思います。
4Gamer:なるほど。
荒木氏:弊社が自社で作るタイトルも、3Dのレースゲームも作れば、カードゲームも作りますし、PCのブラウザゲームみたいな作品も作っていくつもりです。とにかく幅広くやっていこうと考えています。
4Gamer:そういえば、グリーさんは日本の市場と海外の市場の違い、あるいは、PCベースのソーシャルゲームとモバイルソーシャルゲームのユーザー層の違いとかってどのように捉えているんですか。
荒木氏:正直、モバイルソーシャルゲーム界隈のデータ(とくに北米に関しては)は、まだ世の中にほとんどない状態ですから、僕らとしても、まだ見えていない部分はあります。ただ、ゲームへの接し方やデバイスを持っている層から考えると、日本と同じなわけはないですよね。全然違うだろうとは思っています。
グリーからはE3がどう見えた?
4Gamer:そういえば、これも興味本位の質問になってしまうんですが、グリーさんから見てE3はどう見えましたか? 任天堂さんの「Miiverse」なんかは顕著な例ですが、既存のゲーム業界もどんどんソーシャルサービス方面に寄ってきたな、という印象もありますが。
荒木氏:そうですね。僕らとしては、据え置き型ゲーム機や携帯ゲーム機、それにPCゲームなんかは昔からそうですが、あらゆる機器/プラットフォームが一つの場所に集まってきているな、という印象を持っています。それこそ、携帯ゲーム機なんかは、昔からソーシャル要素を持った製品だと思うのですが、それぞれの垣根がどんどんなくなっているなと。
4Gamer:既存のゲームビジネスというと、やっぱり「ゲーム機」ありきのビジネスでしたが、今は、そのさらに上に跨がる「サービス」という軸が新たな争点ですよね。任天堂さんの「Miiverse」や、ソニーさんの「PlayStation Network」、マイクロソフトさんの「Xbox Live!」もそうですが。
荒木氏:要するに、あらゆる機器、あらゆる場所で一元的にコンテンツを楽しめる、目指しているのはそういう世界観ですよね。僕らとしては、「やっぱりそういう方向に向かうよな」という感覚はあるんです。あと、その意味でいうと、個人的には「Onlive」や「Gaikai」といったクラウドゲーミングにとても注目しているんです。
4Gamer:ああ、クラウドゲーミングをどう見ているのかは、ぜひお聞きしたいと思っていました。ちょうど先日、「Gaikai」がサムソンとの提携を発表(関連記事)しましたが。
荒木氏:はいはい。
4Gamer:今後、グリーさんがクラウドゲーミングに進出……みたいなシナリオはあり得るんでしょうか。
荒木氏:直近で具体的にお話しできる計画があるわけではありません。でも、クラウドゲーミングというものが、僕らがリーチできていない新しい層にアプローチできるサービスなのであれば、それは積極的に取り入れていくべきですよね。いろんな意味で注目していますよ。
4Gamer:分かりました。では、そろそろお時間なので、最後に読者に向けて一言お願いします。
荒木氏:この1年間、何もないところからグローバル展開を始め、手探りで進めてきましたが、今年に入ってからリリースした各ゲームタイトルの成功や今回のE3で、確実な手ごたえを感じつつあります。日本で培ってきたモバイルソーシャルゲームのノウハウは世界に通用しますし、今日本の会社は、とても有利なポジションにいると思います。 グリーとしては、ぜひ業界のパートナーの皆さまとともに、グローバル・10億人規模のユーザーさんに素晴らしいコンテンツを届けられるよう頑張っていきたいと思います!
4Gamer:本日はありがとうございました。
――2012年6月5日収録
「グリー」コーポレートサイト
※この記事は、4Gamer.netより提供された情報をもとに、テレビ朝日が改変・編集し掲載しています。元記事はこちら