[E3 2012]Wii U用ゲーム「NEW スーパーマリオブラザーズ U」の不思議な魅力が明らかに。任天堂Developpers Discussionレポート(後編)

  • 更新日:2012年6月6日

 2012年6月5日から米国ロサンゼルスで開催されているE3 2012。同会場で開催されている「Nintendo Developers Discussion」レポートの後編をお届けしよう。イベント後半では、マリオの産みの親である手塚卓志氏が登壇して、Wii U版の「NEW スーパーマリオブラザーズ」について解説してくれた。そのゲームデザインの妙味に注目したい。


「マリオU」におけるMiiverseとは?


 Nintendo Developers Discussionの後半では、江口勝也氏に紹介されて、“小ボス”ことマリオの産みの親ともいえる手塚卓志氏が登場。氏は、「Do you like MARIO?(みなさんマリオは好きですか?)」「Me too.(私もです)」と挨拶して、会場の雰囲気を掴みつつ、新しいマリオシリーズについて語り始めた。

 手塚氏によると、「昔から作り続けている横スクロールアクションのスーパーマリオ。それを今の時代に合わせたグラフィックスや内容にしているのが、NEW スーパーマリオブラザーズシリーズです」とのこと。

 そのWii U向け「マリオ」の新要素の一つがMiiverseだ。MiiverseはWii Uで利用できるSNS的な機能だが、それだけには留まらない。ゲームごとにどのように活用するかは異なるが、「NEW スーパーマリオブラザーズ U」では二つの活用を考えているという。

 一つは何度もダウン(ミス)をしていると、そこで「あなたの今の心境は?」と聞かれてコメントを残せるというもの。そしてもう一つが、スターコインを3個一度に入手したときや、ノーダメージでクリアしたといったスーパープレイをしたときに、同じように「あなたの今の気持ちを書いてください」と問われ、コメントが残せるようなものだという。



 これらのコメントは、Wii Uの本体操作時だけでなく、ゲーム中にも取り込まれてプレイ中に目にすることになるという。例えば、ステージをプレイ中にほかのプレイヤーが繰り返しミスしたポイントにくると、先のコメントが表示されたり、ワールドマップ上に、各ステージでほかのプレイヤーがどんな偉業を残したかを見ることができるようになっている。

 「Miiverseをどう活用するかはゲーム次第です。知らない人同士がなんとなくゲームを共有できるもの。それがMiiverseです」と手塚氏が語り、江口氏も「そのとおりです」とうなずく。

 そして、「マリオU」にはさらに「マリオWii」にはない大きな要素がある。手塚氏は、「NEW スーパーマリオブラザーズ Wiiでは多くの人にマルチプレイを楽しんでもらえたと思います。『U』でも、もっと多くの方に楽しんでもらおうと“ブーストモード”というものを作りました」と、もう一つの重要な新要素について触れた。

 「ブーストモード」は、Wii Uのコントローラから画面をタッチするだけで、ステージ内にブロックを設置できるというもの。マリオをまったく遊んだことがない人でも、ゲームに参加してほかのプレイヤーをアシストできるのだ。

 2女の父親である手塚氏曰く「お父さん、遊ぶのを手伝ってよ、とか、クリアしてみせてよ、とお願いされてもマリオUなら大丈夫」とか。


 ここでスタッフの実演を交えての説明が開始された。実際に、ゲーム内に足場を作って、飛び越えにくい部分を楽にしたりしていた。ただし、ブロックはしばらくすると消えてしまうので、「2人の息がぴったり合っている必要がある」と手塚氏は語る。餅つきの呼吸の要領が必要だと、日本文化の紹介を交えつつ海外メディアに説明していた。

 役割こそ違うが、同じことを目指す「マリオU」の協力プレイ、Wii Uの掲げる「非対称対戦」の「非対称」という要素は、協力プレイについても同様であるわけだ。

 また、スタッフの実演では、今にも落ちそうなマリオの真下にブロックを発生させて助けるという、息のあったプレイを披露して、会場を沸かせていた。

 ほかにもWii U GamePadコントローラの側で敵に触ると、その敵が跳ねたり、画面内のさまざまなものを触ることで変化させたりできるという。ブロックを置く以外にも、一緒に遊んでいるプレイヤーをサポートする手段がありそうだ。

 なお、画面に配置したブロックは、もう一度触ることで、小さなブロックになる代わりに、コインが出るようになる。上手く使えばコインを稼がせてあげることができるかもしれない。

 手塚氏はさらに「もっとたくさんの人で遊べば、さらに楽しくなります」と語り、黙々と遊ぶスタッフに対して「もっと、ここにブロックを置いてくれとか、声をかけあいながら遊ぶと効果的です」と説明していた。


 実はこのあと、「見ていたら僕にもできそう」と口にした江口氏と手塚氏の2人による協力プレイが披露されることになった。この際、手塚氏の指示で上のほうに登れるように江口氏がブロックを置いていったところ、高すぎて通常では行けない場所にあるコインを見事に手に入れていた。

 足場となるブロックを自由に置けてしまうのは、一見ズルのようにも感じられる。しかし、そうしたサポートを受けることで初めてたどり着ける場所があったりするなど、サポートされることを考慮したステージデザインになっているあたりは、さすがとしか言いようがない。サポートはけっしてズルではなく、それもゲームデザイン上、すでに組み込まれた遊び方であるわけだ。

 また、3人以上のプレイになると、Wii U GamePadを使っているプレイヤーは、自由にサポートでブロックを置くことはできるものの、Wiiコントローラーで遊んでいる2人のプレイヤーにしてみれば、相手と勝負しつつ、そのサポートの恩恵を受けられるかを争うため、駆け引きの要素も重要になってくる。そんなところまで考慮されているところも侮れない。手塚氏も「アシストと競争が共存した、不思議な、今までにないようなマルチプレイです」と話していた。



気になる発言やぶっちゃけトークも。海外メディアによる質疑応答コーナー


 最後に、海外メディアからの質疑応答が行われた。念のためお断りしておくが、このNintendo Developpers Discussionは、例年のNintendo Round Tableに相当するものであり、日頃取材に応じることのできない海外メディアのために日本の任天堂開発スタッフが機会を設けているもので、日本国内のメディアは質問不可となっている。

 以下、質疑応答の内容を抜粋してお伝えしよう。

━━「NINTENDOLAND」はWii Uと同梱で発売されたりしないのですか?

江口氏:同梱されるかどうかは、現段階では分からないです。しかし、Wiiと「Wiiスポーツ」の関係と同じような位置づけであるので、(海外では)「Wiiスポーツ」が同梱されていたことから想像してみてください。ですが、日本では同梱版は発売されていなかったので、同じ結果になるかは分からないと付け加えておきます。


━━Miiverseでネタバレを避ける機能があるということでしたが、それ以外に過激な言葉などを見えないようにする機能はあるのですか?

江口氏:もちろんあります。安心してコミュニケーションをしていただくには、あまり人を怖がらせるような、怖い場所にならない仕組みは積極的に導入しようと思っています。


━━Wii Uのターゲット層は、Wiiと同じですか?

江口氏:はい。どちらも5~95才、どんなユーザー層にも遊んでほしいと思って開発していますから。ただ、Wii Uはそれをさらにパワーアップしています。任天堂がカジュアルな層に向けてゲームを作っているとお考えなのじゃないかと思うんですが、実はゲーム大好きという人に向けてもちゃんと作っているんですよと、声を大にして言いたいです。
 もともと任天堂の開発スタッフもゲームが大好きで、自分たちが面白いと思えるものを作っているわけです。それにWii Uでは、さらにサードパーティの皆さんがそれぞれのお得意のユーザー層に向けてゲームを開発したいと思えるハードになっていると思っています。実際にそうしたゲームが遊べるようになるのを楽しみにしていただければと思います。


━━二つめのGamePadに対応するようになると、1個のグラフィックスチップでは負担が大きくありませんか?

江口氏:一つの画面よりも負担があるのは間違いないです。

手塚氏:でも、その代わりに遊びの面白さはグッと上がりますよ。

江口氏:それに、三つの画面に高精細の画像を60フレームで表示するのがすべてではないですよね。同じ画面であれば負担は減ります。ゲームデザインをする上で、テレビをどう使うか、Game Padの画面をどう使うかというところの役割分担がすごく大事なのだと思います。それに、すべての画面にすごいグラフィックスを表示しようと思ったらそれなりに、ハードのコストが上がってくるんです。そうすると、みなさんに買っていただけるゲーム機にならないんじゃないかという考えがあるんですよね。ですから、ここまで性能をキープできれば面白いゲームができるというところを考慮して、テレビ1画面とGamePadの2画面が最大としているわけです。


━━Wiiウェアやセーブデータは、Wii Uに移動できますか?

江口氏:はい、今までショップで買っていただいたものとかはちゃんと移せる用意はしています。


━━Miiverseではどんな使い方を考えていますか? 例えばポケモンを使って何かをする予定とかは?

江口氏:いらないものは(本体機能として)搭載しないので、ちゃんと活用して面白いものを作りたいと思っています。ですが、実際に何をするかについては、皆さんをびっくりさせたいので今は秘密です(笑)。  それと、ゲーム以外にも、今までよりもニンテンドーショップで買い物がしやすくなるというような方向での可能性があると考えています。


━━二つのマリオ(Wii Uの「NEW スーパーマリオブラザーズU」と3DSの「NEW スーパーマリオブラザーズ2」)が同時に発表されていますが、ネタが切れたりはしないのですか? また2作品の違いや特徴を教えてください。また2作品で連携するような要素はありますか?

手塚氏:この2タイトルは、別の開発チームが作っているのでネタ切れの心配はありません(笑)。横スクロールタイプのマリオは、ハードごとに1作品を作ってきているんです。それはそのハードの特徴を何らかの形で最大限活かすことを考えて、作り尽くすということを実践してきています。なので、遊ぶ人も是非各作品を遊び尽くしてほしいと思いますし、2タイトルで連携するということは、予定していません。それぞれで十分に楽しめるように作っていますから、期待していてください。それと、「NEW スーパーマリオブラザーズ2」については、明日のNintendo of Americaのプレゼンテーションがあるので、そちらをご覧ください(笑)。



※この記事は、4Gamer.netより提供された情報をもとに、テレビ朝日が改変・編集し掲載しています。元記事はこちら

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