コンパイルハートの新作「神次元ゲイム ネプテューヌV」をいたってマジメにプレイ。ギリギリな業界風刺だけに留まらないRPGの異色作

- 更新日:2012年9月3日
擬人化×萌え×変身! というコンセプトの元に生み出された可愛らしいキャラクター達と,どこか辛辣な業界風刺とも思える世界観や設定が話題を呼んでいる,アイディアファクトリーのRPG「ネプテューヌ」シリーズ。その最新作「神次元ゲイム ネプテューヌV」(以下,ネプテューヌV)が,2012年8月30日にPlayStation 3で発売された。
コンパイルハートが完全に内部で制作しているというネプテューヌシリーズも,はや3作め。キャラクターも続々と増え,本作ではゲーム機を擬人化した女神と女神候補生だけで,5人+4人くらいで……えーっと,とにかくたくさん登場する。女神達を助けるゲーム制作会社を擬人化したキャラクターや,ド直球なネーミングの敵を含めれば,かなりの人数が物語に絡んでくる。
そういった数々の個性的なキャラクター達によるサブカルネタ満載のやりとり,可愛らしいビジュアルが際立つイベントは,本作の魅力そのものだが,果たしてそれだけなのか。本稿では,実際にプレイした感想を交えつつ,ネプテューヌVがどういう作品なのかをお伝えしていこう。
舞台は1980年代を彷彿とさせる別次元のゲイムギョウ界
待ち受けるのはどこか見覚えのあるキャラクター達
ネプテューヌシリーズの物語で重要な鍵を握るのは,もちろん女神達。そもそも本シリーズにおける女神というのは,各国の住人(シェア)を獲得するために,仕事や奉仕をするのが主な役割だ。しかし,前作までに2度もゲイムギョウ界を救っているネプテューヌ達は,完全に平和ボケしており,朝から晩までのんびりだらだらと過ごすだけの,ちょっと残念な女神になってしまっている。
つれづれなるままに日暮らしゲーム向かひて……という,まったく女神らしからぬネプテューヌに,プラネテューヌの教祖イストワールはカンカン。仕方がないので,ネプテューヌは妹のネプギアと共に,しぶしぶ仕事(クエスト)をこなすことにするのだが,その道すがら,とある事情で“別次元のゲイムギョウ界”へと落とされてしまう。
そこで出会うのは,見知ったはずなのにネプテューヌをまったく知らないというラステイションの女神ノワールと,自分をプラネテューヌの女神だという少女プルルートの二人。かくしてネプテューヌは,もう1つのゲイムギョウ界をとりまく,なんだか“悪っぽい”空気にだらーっと流されていく。……それにしても,物語は比較的かっちりと作られているのに,導入部がゆるい空気なのは,ネプテューヌシリーズの伝統なのだろうか。
ともあれ,ネプテューヌが辿り着いた過去のゲイムギョウ界では,七賢人と呼ばれる人物達が暗躍している。彼らは前作にも登場した“マジェコンヌ”“ワレチュー”に加えて,肩書きだけのリーダー“キセイジョウ・レイ”,元凄腕ハッカー“アノネデス”,違法コピーツールが自我を持った“コピリーエース”,そして世界の幼年幼女を守る“アブネス”と,一言ツッコミを入れたくなるキャラクター達が揃う,悪(?)の組織のようである。
序盤は,この七賢人に対してネプテューヌとノワール,そして新女神のプルルートが立ち向かっていくような形になる。物語の見どころは,やはり可愛らしいキャラクター達による会話劇と,サブカルネタ満載のイベントだ。ゲーム開始直後は女神化したプルルートの横暴っぷりと,それに振り回される敵・味方の様子も楽しい。プルルートの活躍はゲーム開始後しばらく続き,この間は完全にネプテューヌを食ってしまっていて,正直,主人公の前途が危ぶまれるのだが,まぁどちらも確かに可愛いので別にいいや。
なお,コンパイルハートによれば,シナリオは寄り道せずにプレイして30時間程度でクリアできるとのことだが,周辺のシステムややりこみ要素が充実しているため,もっと長く遊べると考えてもよさそうだ。
つなこ氏が描くキャラクター達。イベントCGも満載で,要所で表情豊かな女神達を見られる
立ち画とテキストで進むイベントシーン。立ち画が感情に合わせて動くようになっているのは,ネプテューヌシリーズはもちろん,同社の「アガレスト戦記」などでもおなじみの手法だ
つなこ氏が描くキャラクター達。イベントCGも満載で,要所で表情豊かな女神達を見られる
初代から着実に進化する戦闘はテンポ,爽快感共に向上
辛辣な言い方をすれば,シリーズ1作めにあたる「超次元ゲイム ネプテューヌ」は,戦闘周りの出来が良くなかった。レベルデザインに難があり,似たようなマップで同じような敵と戦うことが多く,さらに戦闘が単調になりがちなのに物語のボリュームがあったため,なかなか先に進めないような状況が続いてしまっていた。期待が集まっていた戦闘時の女神化も,通常戦闘では使いづらい切り札的な要素で,戦闘を劇的に変化させるほどのインパクトはなかった。
初代ネプテューヌの戦闘画面
しかし,結論から言ってしまうと,ネプテューヌVはそんな前車の轍を踏んではいない。単純なユニットターン制から抜けだした戦闘システムは,本作ならではの味を持ったものになった。序盤をプレイした段階では,ネプテューヌVの戦闘を面白いものにしている大きな要因は,「コンボメイクシステムの簡略化」「女神化のコストパフォーマンス改善」「エグゼドライヴゲージ」の3つにあるように思えたので,ここではその3要素を中心に紹介していこう。
コンボメイクは,共通の1stアタックから始まり,2nd,3rd,4thまで続く攻撃を,自分の好きなように設定できるネプテューヌシリーズ伝統の戦闘システム。本作では,手数に優れる「ラッシュ」,攻撃力の高い「パワー」,敵のガード値を削りやすい「ブレイク」という3系統のスキルを,2ndから4thまでにコストポイントの許すかぎりセットできる。戦闘では,例えば2ndでブレイク,3rdでラッシュ,4thでパワーといったように,自由に攻撃方法を選べるようになっている。
左が初代ネプテューヌ,右が最新作ネプテューヌVのコンボメイク画面
このコンボメイクは,コンボルートを1つずつ設定するという複雑さがネックだった1作めから,2作めで大幅に簡略化され,今回のネプテューヌVで再度調整されて非常に分かりやすいものになった。使わない攻撃ははずしてコストポイントを節約し,代わりに強力な攻撃をセットするといったように,キャラクターごとに個性的なコンボを組めるのもポイントだ。
コンボメイクで設定した4段の通常攻撃と,SPを消費して技を放つSPスキルは,戦闘を組み立てる上で最も基本となる部分。これが分かりやすくなったことで,戦闘前のハードルは下がっており,かなりとっつきやすくなっている。
序盤,「ラッシュ」「ブレイク」は物理攻撃系の技が多いようだが,「パワー」には早い段階で魔法攻撃力依存の属性技がセット可能になる。例えばプルルートは物理よりも魔法攻撃に優れるタイプなので,挑むダンジョンに合った属性の魔法攻撃を入れてあげると,戦闘はかなり楽になる。ちなみに,序盤のキャラクターはネプテューヌが物理寄り,ノワールが万能型(個別の能力はほか二人に劣る)と,非常にいいバランス
次に,ネプテューヌシリーズの目玉であり華と言ってもいい女神化は,使用したキャラクターの見た目を変化させ,ステータスを底上げする技だ。使用後のステータス変化は体感できるほどで,格上の敵を相手にしても対等に戦えるようになるくらいの性能がある。
ネプテューヌVでは,最大SPの20%を消費するだけで女神化できるうえ,変身後すぐに行動に移れるという手軽さで,ボス戦だけに限らず,通常戦闘で風向きが悪くなったときにも気軽に発動できるようになった。女神化するとキャラクターの見た目やステータスだけでなく,ボイスや攻撃方法も一変するため,単純作業になりがちな戦闘のスパイスとしての効果も高い。
戦闘用の技としても非常に便利な女神化だが,それだけでなく,本作では使用条件を簡単にしたことで,派手で爽快感のある戦闘を演出するのに大切な要素へと進化している。
女神化したネプテューヌ(パープルハート)
最後のエグゼドライヴゲージにも,続けていくと冗長になりがちな戦闘を飽きさせない工夫が見られる。エグゼドライヴゲージは敵にダメージを与えたり,味方がダメージを食らうと溜まっていくもので,これが一定値を越えると,通常攻撃後に「EXフィニッシュ」で追加攻撃をできるようになる。さらにゲージを消費すれば,強力な必殺技「エグゼドライヴ」を発動することも可能だ。
左の戦闘画面で戦闘コマンドに表示されているのが,現在のエグゼドライヴゲージ。右はSPスキル,エグゼドライヴを使う時のコマンドだ
エグゼドライヴゲージには何段階かのレベルがあり,戦闘を続けていくとより高レベルのEXフィニッシュが使えるようになっていく。例えば,通常攻撃とSPスキルで10戦してゲージが溜まったら,レベル1のEXフィニッシュが放てるようになり,さらに10戦してゲージが次の段階へと移行すると,レベル2のEXフィニッシュが使えるようになるといった具合で,プレイヤーはダンジョン内で戦闘を繰り返しながら,段階的にしかも素早くキャラクターが強くなっていくのを体感できるのである。
ちなみに,EXフィニッシュはコンボメイクによって□×○△の4ボタンに別々のものをセットできるため,攻撃バリエーションを増やすのにも一役買っていたりする
EXフィニッシュがあると,圧倒的に敵を倒す効率が上がるものの,エグゼドライヴゲージはダンジョンの外に出ると初期化されてしまう。かといって一つのダンジョンで長時間戦おうと思うと,当然HPやSPの管理が厳しくなってくる。要するに,エグゼドライヴゲージを活かして,適性レベルの敵が出るダンジョンに長期滞在するためには,被ダメージを減らす必要があるのだ。そして,そういうバランスが戦闘にほどよい緊張感を与えてくれる仕組みになっている。
このほかにも,ネプテューヌVには戦闘に関する要素がいくつかあるが,上記した3点が最も根本的な部分になっている。ここがしっかりと作られているからこそ,物語やほかの戦闘システムをストレスなく楽しめるというわけだ。
ネプテューヌVの戦闘で個人的に好きなところは「打撃感」だ。敵を攻撃したときの衝撃と重たさはかなりのもので,爽快感がある。ただ,人によってはキャラクターの可愛らしいモーションと攻撃時の衝撃が合っていない,と感じる場合も
EXフィニッシュには,後衛に設定したキャラクターの力を借りるアシストフィニッシュを設定することもできる。キャラクターのカットインが可愛い
ダンジョン&戦闘におけるキャラクターの3Dモデルは作り直されている。シリーズを続けてプレイしている人は,こういった細かいビジュアル面の変化にも注目したい
パンチラがゲームシステムに組み込まれるくらいは当たり前の作品なので,そういった露骨な表現が苦手な人は注意。逆に大好物だという人は,今すぐゲームを始めると幸せな気分になれるはず
根っこはバッチリなネプテューヌV
ここまで見てきたとおり,物語と戦闘というRPGに欠かせない要素はかなり綺麗にまとまっているネプテューヌV。とくに戦闘は前2作と比べて格段に遊びやすくなり,可愛らしいキャラクターやサブカルネタ満載の破天荒な世界観が好きだという人にはオススメできる作品になった。
また,ここで紹介してきたのは,あくまで本作の根本となる要素ばかり。実際のゲーム内では,アイテムの開発や,遊び心に溢れたコラボレーションといったさまざまな要素が,ゆっくりと段階を踏んで開放されていく。最終的にはかなりの数のシステム,技,アイテムそしてキャラクターが,プレイヤーのものとなるはずで,それを手に入れていく過程は,まさにRPGの醍醐味とも言える。
もちろん,本作には期待通りサブカルチャーをネタにしたキャラクターのセリフやアイテムの名前,敵などが,本当に細かい部分まで詰め込まれている。登場する女の子達の可愛さもピカイチで,ゲーム好きだけでなく,いわゆる萌えアニメ好きにもしっかりと刺さる作品になっている印象だ。
キャラクターが可愛いだけ,世界観が尖っているだけに留まらず,RPGとしての面白さがしっかりと盛り込まれたネプテューヌVは,シリーズの集大成とも言える作品になっている。
「神次元ゲイム ネプテューヌV」公式サイト
※PCサイト
(C)2012 IDEA FACTORY / COMPILE HEART
※この記事は、4Gamer.netより提供された情報をもとに、テレビ朝日が改変・編集し掲載しています。元記事はこちら