THE BAWDIES
"ROCK ME BABY" TOUR 2012
6月26日(火)ZEPP TOKYO
これだけ惚れ抜かれているのだ、それはもうロックンロールの神様も本望だろう。本気でそう思ってしまうくらい純粋な愛情と敬意と笑顔に満ちた空間だった。テーラーメイドのスーツスタイルがすっかりお馴染みの彼らだが、そうした正装でステージに臨むのも、ひとつには1950年代、60年代のルーツミュージック、ロックンロールという二十世紀最大の発明へのリスペクトを表明しているのかもしれない。彼らの内にしっかりと根付いたルーツミュージックがTHE BAWDIESというフィルターを通って、活き活きと鳴り渡り、聴く者に降り注ぐ。このうえなく熱く、混じり気なくハッピーな光景を観るにつけ、音楽のDNAはこうして絶えることなく脈々と受け継がれていくのだと確信する。音が放たれる一瞬はたしかに刹那だ。しかしその一瞬が人の心に残したものは永遠の煌めきにもなりうる。それはなんという希望だろうか。
ニューシングル「ROCK ME BABY」を持って全国を回ったツアーもいよいよ終盤に突入、11公演目となるZEPP TOKYO。開演を待つフロアはみっちりと埋め尽くされている。当然ながらソールドアウトだ。期待のボルテージゲージが今にも振り切れそうなその瞬間、ステージがまばゆく輝いた。幕開けを飾ったのは「EMOTION POTION」。凄まじい歓声の中、ドラムのMARCYがおもむろにビートを刻み、一斉に4人の音が塊になって押し出される。みぞおち直撃の重量感。パンチの効いたROYの歌声に早くもノックアウトされてしまう。
「THE BAWDIESです! 今日はガッツリ、そしてボッテリいきましょうか。お祭り好きのみなさん、薄々勘づいてるかもしれませんが、実はお祭り、もう始まってますよ〜!!!」
ROYが叫ぶや、3曲目「I'M A LOVE MAN」にして場内の熱気はすでに沸点を超えた。怒濤のシェイキン&ダンシングタイム。前半戦から惜しみなく全力全開でオーディエンスに対峙する4人の意気が頼もしい。ぶっとくベースを唸らせながらシャウトするROYのちょっとバンカラで、それでいてセクシーなたたずまい、鋭くアグレッシヴなギターアクションで魅せるJIM、クールさと泥臭さを兼ね備えたTAXMANの腰の入ったギタープレイ、細身の体躯から繰り出されるMARCYのタイトかつフレキシブルなリズム。彼らの情熱的なアンサンブルに場内一体のグルーヴが渦巻く。ヤンチャでキュートで暑っ苦しくて、とにかく楽しい。
敬愛するレイ・チャールズのカバー「MESS AROUND」、さらには新曲も2曲披露された。「新しい担任の先生が教室にやってきた場合、やさしく迎えて入れてほしいなと。きっと優しく熱い先生だから」、そんな曲紹介で演奏された最初の新曲は朗々と歯切れよく、ほのかに甘酸っぱいミドルテンポなナンバー。その後、3曲を挟んで、もう1曲。「もしさっきの先生が荒々しい性格の体育教師だったとしても仲良くできますか?」とまたもや謎の紹介ながら、ギラギラとしたプリミティヴなマッチョ感はたしかに言い得て妙だ。それにしてもなぜ教師か。こうしたサウンドをロックの先人、師として喩えているのだとすればすごい。
TAXMANがボーカルをとった「SO LONG SO LONG」では各自のソロも見どころ。続いての「B.P.B」ではROYとのツインボーカルで会場を沸かせる。
「形なんか気にするな、形からはみ出たこの部分、ここがロックンロールと呼ばれるんじゃないかと!」
そうしてROYが手を振り下ろし、客席に合図を送ると一斉に、しかし思い思いのやり方でオーディエンスが踊る。ジャンプ、モッシュ、なんでもありの「YOU GOTTA DANCE」。ついにはJIMがフロアへ飛び降りて弾きまくる一幕も。
それにしてもなんと温かく近しい空間だろう。彼らがライヴを“パーティー”と呼ぶのもよくわかる。ROYの豊富で達者なMCや客席とのやりとりで生まれる独特の親密さ、そのニュアンスを書き起こすのは難しいが、彼らが率先して心を開いているからこそオーディエンスも安心して素の自分を音楽に委ねられるのだろうと思った。
「ロックンロールの神様に今、ここが世界でいちばん熱い場所だってことを証明しなきゃいけないんです。その証を見せてもらっていいですか。俺らが世界一だ、文句あるかと、そんなシャウトを見せてもらっていいですか!」
アンコールのオーラスは「KEEP ON ROCKIN'」。ROYが呼びかけ、フロアが目一杯の力を込めたハンドクラップで応える。渾身のコール&レスポンス。最高最大、2700人の声がひとつになった瞬間、全身に電気が走った。理屈じゃない、これがロックンロールだ。
最後は恒例、バンドとオーディエンスの共同作業「わっしょい!」で、世界一熱い夜は締めくくられた。
【取材・文/本間夕子】
【Photo/橋本 塁(SOUND SHOOTER)
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