NICO Touches the Walls
“NICO Touches the Walls FREE LIVE in 代々木公園”
5月16日(水)代々木公園野外ステージ
開催告知がわずか一週間前という超直近インフォメーションにも関わらず、代々木公園野外ステージに集った聴衆の、その数なんと7000人! 歩道橋まで及ぶ人波、上昇気流に乗る彼らの勢いを知るには十二分に足る壮観の光景だ。舞台前にはこの日リリースされたニューシングル「夏の大三角形」購入者限定の優先ゾーン、その名も“大三角形エリア”が設けられ、開演予定の30分前にはすでにすし詰め状態。野外とは思えないほどの熱気を立ちのぼらせている。もちろんフリーライヴゆえ、たまたま通りがかって足を留めた者、興味半分で様子を伺いにやってきた者も少なからずいただろう。しかし、それが却って彼らに対する世の中の注目度の高さを物語っているのだという気がする。
開演予定時刻きっかりにSEが切り替わった。まだ空は明るいが、ライトの灯ったステージはそれを上回ってまばゆい。大きな拍手と歓声に迎えられ、楽器を構える4人。 「どうもNICO Touches the Wallsです!」
光村龍哉の第一声に俄然、空気が膨張する。今日はことのほか暑い1日だったが、この瞬間、増幅した熱で代々木だけさらに気温が上がってしまったかもしれない。本気でそう思いたくなるくらいオーディエンスのスタートダッシュは凄まじく、1曲目にして一時演奏中断となるほどの熱狂ぶり。しかし彼らも動じない。冷静に観客を気遣い、事態が収まると演奏の止まったところから曲に戻るというファインプレーで客席を魅了するのだからさすがだ。輪郭線は端正ながら内にたぎる熱量は尋常じゃない。そんなNICO Touches the Wallsの本領をのっけからひしと感じさせるステージングに、ライヴは2曲目「バイシクル」で早くも最初の沸点を越えた。
「平日にも関わらずめちゃくちゃすごい数の人が集まってくれて本当にありがとうございます! リリース日にライヴがやれるのはすごくうれしいです。しかも昨日は雨でしたけど今日は1日いい天気で、今年初の夏日も記録したということで。まさに「夏の大三角形」日和でございます!」
すぐさま客席から“晴れ男!”と合いの手が入る。と、ここまで振っておいて次に「夏の雪」を聴かせるあたりがまたニクいではないか。時折、吹き抜ける夜風が叙情を運ぶ。続く「ラッパと娘」では一転、ある意味、彼らの真骨頂ともいうべきブルージーなアンサンブルを骨太に響かせ、そうしていよいよ大本命「夏の大三角形」へ。
「ライヴもCDも命がけ、どっちもすごく大事に作ってる。だからこうやってCDの発売日に集まってもらって、みんなで楽しい時間を共有できるのは素晴らしいことだなと改めて思います」
暮れ始めた空の下、青く発光するステージ。夜空に光の尾を引いて星が飛んでいくように、歌声が、音が夕闇を渡り、大地へと降り注ぐ。彼らと空とオーディエンス。その3つを結ぶ軌跡をたどればまさしく大きな三角形が描かれる。星座に負けない、綺麗な代々木の大三角形が。
エッジの立ったロックンロールチューン「THE BUNGY」で魅せた楽器パート同士の掛け合い、ブルースハープも加わってますます加速するアンサンブル、オーディエンスとのコール&レスポンス。ラストナンバー「手をたたけ」で7000人のクラップを街中に轟かせる頃にはすっかり夜だった。全7曲のステージ。刻々と移り変わる空の色、グラデーションする空気の中でNICO Touches theWallsの音楽を、躍動する情熱をリアルに味わうことができた得難い1時間だった。リリース日であり、また、夏の一歩手前という繊細な季節感も合わせて、そう思う。
この先に控える夏フェス、そして秋からの全国ツアーがますますもって楽しみだ。
【取材・文/本間夕子】