星野 源

New single「知らない」 Now on sale!!

スケールの大きなアンサンブルから立ちのぼる人肌の温もり。このたしかさが強さだと思った。星野源から届いた4thシングル「知らない」。夏のヒットチューンとなった前作「夢の外へ」から一転、キーンと冷えた冬にふさわしい力強くも壮大なバラードだ。終わりの、その先にある景色。それが希望でなくてなんだろう。今回は歌詞に焦点を当て、この曲に込められた彼の心情を垣間見てみたい。

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Q:歌詞にある“終わり その先に”がひとつ、この曲のテーマだと思うのですが、その背景にはどこか“死”があるようにを感じて……そういう受け止め方をしてもいいものでしょうか。

星野 源:全然、大丈夫です。昔から、僕の曲は死にまつわるものが多かったりするんですね。やっぱり“生きる”とか、そういう前向きなことを書こうとしたときには、まずその裏側なり向こう側なりにある“死”っていうものをまず書いてからでないと、安易な励ましみたいになって嘘ついてるような気がしちゃうんですよ。だから前向きなことを書こうとすればするほど死の匂いがしてきてしまう。

Q:でも根底には希望……“希望”って言ってしまうのも薄っぺらいのかもしれませんが、すごく力がありますよね。たしかに星野さんは一見、人間が抱える暗い部分にフォーカスした歌詞を書かれることが多いとは思うんですが、聴いた感触はむしろ温かくて。

星野 源:やっぱりどん底の人間の強さというか、どれだけ痛めつけられても燃え上がる何か、みたいな、そういう生命力を書きたいなと思って。そしたらこんな歌になりました。これ、歌詞より先に曲からできたんですけど、水平線から燃えるような太陽が昇ってくるイメージがあったんですよね。結構ヘヴィな感情のときにできた曲だったのに、イメージする映像がすごく前向きだったんですよ。だから、ただ暗い曲じゃなくて、暗さを太陽の光が当たるところまで引っ張り上げるような、そんな気持ちで歌を作れるんじゃないかと思って。

Q:暗さをひっぱり上げる。

星野 源:例えば“お先真っ暗”っていうけど、それは真っ暗になってるだけで、その先は絶対にあるんですよ。でも、それを絶望的になってる人に言っても“いや、わかってるけど、そんな気持ちになれないよ”っていうのが正直なところだと思うんです。“終わりが始まり”っていうテーマの歌ってすごく多いじゃないですか。大抵すごくやさしくて、でも、絶望的なときにそういうやさしい歌を歌われても僕には綺麗事になってしまう気がとてもしたんですよね。そういう歌は絶望を乗り越えたあとに聴くとちょうどいいけど、乗り越える前には聴けないんですよ。だから、そういうときにもちゃんと聴ける音楽というか、絶望的な気持ちや状況に対して何かしら効力が生まれるような歌にしたいなと。

Q:やっぱり自分の音楽では、嘘をつきたくない、綺麗事は言いたくない?

星野 源:はい。ただ、嘘って言ってしまうのも微妙なところだと思うんですけどね。僕は役者もやっていて、言ってしまえばお芝居は全部嘘じゃないですか。あと、僕の曲は物語調のものも多いんですけど、その物語自体は嘘だったりするし。でも自分の気持ちには嘘をつかずにいたいなって。だから自分にない感覚や、自分の中に浮かばない情景は絶対書かないようにしてるんです。

Q:歌詞の冒頭に“光”という言葉が出てくるじゃないですか。“光”ってすごくポジティヴな、それこそ希望の象徴みたいに使われることが多いと思うんですが、ここに書かれている光は、そういう曖昧なものでも綺麗事でもなくて、命そのものだなって思ったんですよね。希望だけじゃないかもしれないけど、生きていることそのものが光なのかなって。  

星野 源:それはすごくありますね。実はこの冒頭の歌詞がいちばん最後にできたんですよ。曲の入口が全然決まらなくて、でも、そこがないとメッセージだけの歌詞になっちゃって、歌にならないとずっと思ってて。やっぱりポップスとして聴いてもらいたかったので、ちゃんと詩的な表現から始まりたかったんですよ。ホント最後の最後に“灯り消えて気づく光”が思い浮かんで。それは実際、震災のあと街からネオンが消えたときにも星がよく見えるなあって思った経験にも基づいてるんですけど、つまり、どれだけ絶望的なことが起こったとしても何かしら気づくことは必ずあるんだよっていう。それが冒頭に書けたので、よかった〜と思って。

Q:ポップスとして聴いてもらいたいというのも大きい要素でしょうね。

星野 源:そういう意味では要所要所にJ-POPで耳にするような言葉をちゃんと入れたいなと思ったんですよね。例えば“さよなら”とか“二度と逢えなくても”とか、すごく耳馴染みがよくてJ-POP的な言葉だと思ってるんですけど、そのなかに突然“絶望”っていう言葉が出てくることで、ポップスとして成立させつつ自分の書きたいことを書くっていうのが、ひとつ挑戦だったんです。

Q:J-POPって意識されますか。

星野 源:J-POPは大好きで。僕、サザンオールスターズとユニコーンが大好きで。特に桑田さんはJ-POPのど真ん中、頂点にいるじゃないですか。でも、とんでもなくぶっ飛んでるじゃないですか。これをゴールデンタイムで歌うんですか!? みたいな。

Q:ははははははは! よく、わかります。

星野 源:「マンピーのG★SPOT」にしてもそうですけど、やっぱり過激だと思うんですよね。そういう曲を日本のテレビのゴールデンタイムにウワーッて楽しそうに歌って、聴いたみんなも“楽しい!”と思うって、ギターをガーッて掻き鳴らして“死ねーっ!”って叫ぶより過激だし、面白いと思うんですよ。前向きに過激っていうか、すごくカッコいい。そういうJ-POPが大好きで。でもそれってお客さん2人だけの前でやると面白いんだけど過激ではなくなるんですね。基本的に面白いものは好きなんですけど、大衆の目と勝負してるっていうところがポップスとかJ-POPと呼ばれるもののカッコよさだと思ってて。僕はまだ全然、桑田さんの足元も見えないくらいですけど、ちゃんとそこには憧れていきたい。“これでいいや”“ここまででいいな”とは絶対に思いたくないんです。

Q:じゃあ今の、どんどん右肩上がりになっている状況はいいですね。

星野 源:はい。だんだん勝負できる状況ができてきたので、すごく嬉しいし、楽しいです。

Q:この曲がいろんな人の耳に届くっていうことにすごく意味がある気がします。

星野 源:そうなったらいいですね。例えば小学生が“なんだかいい曲だな”って思ってくれたりとか、歌舞伎町のホストのお兄ちゃんに“これ、超ヤバい”みたいに言ってもらえるのは嬉しい。“歌詞とかよくわかんねぇけど、超いいわ”とか、すごくいい(笑)。

Q:“君にどんなことが歌えるだろう/意味を越えて”という一節には星野さんのシンガーとしての覚悟や使命感みたいなものも伺える気がして。デビュー当初は歌うことに自信がなかったっておっしゃっていましたけれど。

星野 源:自信はなかったですね。聴いてくれるのかしらっていう。でも、みんなすごく聴いてくれたので(笑)。やっぱりすごく嬉しかったからこそ誠実でありたいし、ちゃんとひとり一人に向けて歌いたいし。もちろん単純に、さっき言ってた誰かが絶望したときに自分はどんな歌が歌えるんだろうっていう意味もありますしね。それは自分が歌を歌う人としてお客さんに届けるっていうことと一緒で、そこで単純に“元気だせよ”ではどうしても記号になってしまう。もちろん全然、間違ってないんだけど、でも言葉の意味ではなくて感覚というか、意味を越えた、もっと自由なところで伝えられるんじゃないかなって……すごい漠然とした願望の歌詞ですけど。

Q:でも、さっきおっしゃってた小学生とか歌舞伎町のお兄ちゃんに伝わるってそういうことですよね。

星野 源:そうです、そうです。ハッキリとはわからないけど、何かが伝わるっていうのが大事だなって。例えば20年ぐらい経って“あ、この曲ってこういう意味か”でも全然いいし。いちばんそういう伝わり方ができるのが音楽だと思うんですよ。感覚で何かを届けるって大事だなって思います、ホントに。だから……届けてください! お願いします!!(笑)

【取材・文/本間夕子】

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