LOVE PSYCHEDELICO

New single「Beautiful World/Happy Xmas(War Is Over)」 Now on sale!!

聴いた瞬間にスッと心に沁み込む。温かく強い、どこか寂しくて、けれど希望をはらんだ美しい世界。それはどこか遠くの理想郷ではなく、実はあなたのいるその場所であるのだということを2人の音楽は教えてくれる。1年3ヵ月ぶりとなるニューシングル「Beautiful World/Happy Xmas(War Is Over)」。「Beautiful World」は映画『任侠ヘルパー』の主題歌でもあり、「Happy Xmas(War Is Over)」はファンが待望したジョン・レノン&オノ・ヨーコのカバーという、実に豪華な両A面シングルだ。軽やかで、けれどいっそう深みを増した彼らの世界に触れてみたい。

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Q:「Beautiful World」は映画『任侠ヘルパー』の主題歌というお話があって作られたのでしょうか。

KUMI:実は曲自体は去年の震災直後からあって。“やっぱり音楽で何かしなきゃ”って思ったときに取りかかっていたものなんですよ。

NAOKI:ただ、全体が完成したのはお話いただいてからですね。歌詞やメロディは生まれていたけど、イントロのギターリフなんかは映画の映像を少し見せてもらったことで、それにインスパイアされて新たに録音したんです。そういう意味では長い時間がかかった曲ですね。

Q:温めている間に曲に対する想いとか曲に込めた意味合いが変化していったりはされました?

KUMI:どうだろう……曲の世界観はたぶん最初にあって。ただ、軸はすごくシンプルだけど、どこか表裏一体な裏腹さや曖昧で抽象的な世界観を扱っているから、その曖昧さが自分の中にもずっと残っていたんですよね。“最後の形はこれです”って仕上げるための最後の一手をなかなか打たずにいたというか。だから何かが変わったとかはないんだけど……曖昧だからこそ、いろんな視点から見れる曲でもあって“今日はこの視点で見れるしな”みたいな感じでずっと自分の中でも定まらなくて。

Q:でも、いろんな視点から見れるって強いですよね、曲として。

KUMI:うん、そういう曲にはしたかった。何かを決めないと形にはならないから、それを残したままどう決めるかっていう。

NAOKI:そういう葛藤ってアウトプットするまで続くよね。今回の場合はさっき言ったイントロのギターリフが出てきたときに“ああ、曲が完成したな”っていう気持ちになれたんですよ。すごくシンプルなフレーズだから、そんな大それた話でもないですけど(笑)。

Q:いや、すごく好きです。聴く側の気持ちをしっかり曲の世界へと導入してくれるフレーズだと思いました。

NAOKI:そう、世界観はすごくあったのに、そこに導入する術が最初はわからなくて。でも映像を見てハッとしたんですよね。僕、映画が大好きなんですけど、映画って時に台詞よりも絵の強さが何かを語る瞬間があるんですよ。この曲にもそういうものが必要だって。例えばイントロが鳴った瞬間、聴いた人の中に絵が思い浮かんで、でもそれが歌に入った瞬間に切り替わる、みたいな。自分たちが発信する想いを超えて、みんなが無意識にハッとしてくれるような、シンボリックなフレーズを意識しましたね。それがなかったらこの曲の世界観に導けない気がして。『任侠ヘルパー』の映画自体も素晴らしかったです。この映画とコラボレーションできたことがすごくうれしくて。

KUMI:すごくいいマッチングでした。同じテーマを感じたし、その表現の仕方もすごく好きで。

Q:ちなみに歌詞の核となる言葉はやっぱり“love”ですか。それとも“Beautiful World”?

KUMI:基本は“love”。それを“Beautiful World”っていう景色にしているんだけど、それが何かをあえて言うなら“光”かな。この曲は光と影がテーマにもなっていて、全体的にトーンは暗めだけど、でも、そこには必ず光があって。ただ、“目指すべき光”ではないんです。どこかにあるものではなく、ここ……つまり自分の中にある光。それが“love”であり“Beautiful World”でもあって。

NAOKI:歌詞も“Let's go to the Beautiful World”とは書いてないじゃない? “In this Beautiful World”だと思うの。目指すべき理想郷の話じゃなくて、どんな状況であれ、あなたのいるその場所が“Beautiful World”だよっていう。

KUMI:悲しいことや怒り、楽しいものや美しいもの……全部がここにはあって。でもどんな状況に見えても、変わらずに光はあるから。

Q:本質的に人は独りであるということを踏まえて肯定するような、大きな愛情を感じたんですよね。

KUMI:そうだね。生きることそのものというか、人間に対する愛というか。

NAOKI:うれしいです。ロック魂でもなければルーツミュージックの紹介でもなく、そういうことをポップスで表現したかったので。だから、今回カバーしてますけど、ジョン・レノンの「Happy Xmas(War Is Over)」と同じなのかな。それまで「Cold Turkey」とか「Mother」とかロックなアプローチをずっとしてきた人が、より世界に訴えて闘おうというときに選んだ表現が「Happy Xmas(War Is Over)」だったっていう。それに近い感覚があるんですよ。

Q:わかる気がします。歌っている愛の世界が同じというか。

KUMI:うん、きめの細かさや温かさ、そういう質感がすごく。

Q:「Beautiful World」とカバーの「Happy Xmas(War Is Over)」で両A面になってることにも意味がありますよね、きっと。

NAOKI:「Happy Xmas(War Is Over)」はこれまでにも演奏していて、CD化の要望もたくさんいただいていたんですよ。でも何かの機会がないとなかなかできないじゃないですか。今回、『任侠ヘルパー』をきっかけに「Beautiful World」をリリースさせてもらうことになって、だったらこのタイミングじゃないかなって。ちゃんとみんなに今のLOVE PSYCHEDELICOをプレゼントしたいと思ったんですよね。初回特典とかそういうのじゃなくて、音楽でちゃんとプレゼントしたくて。で、何がいちばんみんなに喜んでもらえるかなって考えたときに、時期的にも「Happy Xmas(War Is Over)」のカバーかなと。まあ、こちらはタイアップもないし、両A面って自分たちで言ってるだけなんだけど(笑)。

KUMI:こっそりカップリングで入ってます、ではなくて“今、この曲もちゃんとみんなに伝えたいんだよ”って示したくて。ジョンとヨーコがこの曲を作ったときの気持ちや時代背景を考えると、すごく複雑なものがあるけど、私たちがこの曲を演奏するにあたっては純粋に平和とか喜び、楽しさを伝えたいと強く思ったんですよね。

Q:今の時代だからこその。

NAOKI:当時はまだベトナム戦争の最中で、この曲はそういう世界に対して何かできないかってジョンとヨーコが闘いとして表現したものだったけど、そのおかげで、俺たちは今、この曲が流れるとクリスマスを楽しみにできる時代をリアルに感じることができるし、だからこそ楽しく、この曲を伝えられる。

KUMI:彼らが訴えた“こういう世界がありますよ、手に入れましょう”ではなくて、“今、ちゃんとそういう世界に生きているんだよ”って。

NAOKI:まさに“In this Beautiful World”だね。

Q:すごいな、ちゃんと繋がってる。

KUMI:ね? そんなこと全然意識してなかったけど、この歌でしか伝えられない“それ”を伝えたいっていうのは明確にあったから。彼らが世の中に落としたイメージやアイデアを、みんなが実現しようとがんばってくれたから、私たちは実現された世界に生きることができているんだってことを。

NAOKI:そう考えると音楽って、芸術って素敵だね。“hope(希望)”として世に落とされた作品を、ちゃんとイメージできるもの=“imagine(想像)”として我々が受け取って。で、我々が伝えたイメージを次の世代の人たちは“real(実現)”にしていくっていう。そのバトンはなかなか政治では繋いでいけない。

KUMI:それが芸術の力、役割なんだと思うよ。

Q:3曲目の「Good to me」がまた好きなんですよ。この抜けのよさがあるから「Beautiful World」も「Happy Xmas(War Is Over)」も活きるし、1枚の作品として完成する気がして。

KUMI:そう、このあっけらかんとした感じと日常を感じられる感じがいいなって。「Beautiful World」と「Happy Xmas(War Is Over)」の2曲だけだと、ともすれば地に足に着かなくなりそうだけど、ここでもう一回グッと日常を引き寄せたいなって。

Q:ホントこのシングルが聴けてよかったです。そうなると、そろそろニューアルバムが待ち遠しいところでもありますが……。

NAOKI:作ってますよ〜(笑)。

KUMI:来年の春までには出したいなって思ってるんですけどね。どうなるかな(笑)。

NAOKI:今、折り返し地点かな。だいぶサウンドもたまってきてるし、ちょうど明日から1週間ぐらい、歌詞を仕入れに旅に出ようかと。

KUMI:“仕入れに”じゃないね、“書きに”だね(一同爆笑)。仕入れる余裕はないよ、もう形にして出していかないと(笑)。なので、ちょっと山にこもって書いてきます!

【取材・文/本間夕子】

Beautiful World/Happy Xmas(War Is Over)

LOVE PSYCHEDELICO

2012/11/14[シングル]

\1,260(税込み)

VICL-36728

ビクターエンタテインメント