ジャンク フジヤマ
メジャーデビューからわずか3ヵ月にしてこれまた強力なポップチューンが届いた。しかも今回は「PROUD/EGAO」の両A面! 「PROUD」のリッチなブラスアレンジと牽引力のあるメロディはジャンク フジヤマという世界の間口をいっそう広げ、また「EGAO」ではポジティヴな言葉たちが爽やかなアンサンブルと共に心地よく耳に転がり込んで、気持ちをグッと上向きにしてくれる。カップリングの2曲も含め、彼の強烈な個性と魅力にさらに一歩、踏み込んでみたい。
Q:今回は全曲、ジャンクさんが作詞を手がけられていますが、その中でも「PROUD」は力強いメッセージが印象的で。ポップネス溢れるサウンドと相まって、とても耳を惹かれました。
ジャンク フジヤマ:これはもう単純に、ひとりがひとつの優しさを持つことで、1億人いれば1億のやさしさになるんじゃないかな、みたいなことを言いたかっただけなんですよ。
Q:そう言いたくなるような、何かきっかけが?
ジャンク フジヤマ:いや、大きな話ではないですよ? ただ、なんとなく今の社会を見てると、マナーが悪い人間が多いな、って。血液型とか関係ないかもしれないですけど、僕はA型なのでマナーの悪さがホント気になるんですよ。例えば電車のシートは7人掛けって言われてるのに5〜6人でどっかり座ってるのとか、ホント腹立たしくて。でも人間っていろんな面を持っているから、そこだけ切り取るとマナーの悪い人でも、他の部分ではきちんとしてるのかもしれない。だったら、せめてひとつでも優しい心を持てば、みんなが救われるんじゃないかなと。
Q:一方で「EGAO」は大きな希望感に溢れた楽曲ですね。
ジャンク フジヤマ:人間の根源的な幸せは笑いによって表現されるっていう自分の理念に基づいて……っていうと仰々しいですけど(笑)、ポジティヴな要素の中でも、これは特に“笑顔”に焦点を絞ってみました。ポジティヴなサウンドとポジティヴな歌詞っていうのは常に念頭にあって。
Q:ご自身も常にポジティヴですか。
ジャンク フジヤマ:ま、特にネガティヴってことはないですけど、こと音楽に関してはポジティヴなほうがいいですから。もちろん好みもあるでしょうし、ネガティヴなものが聴きたいときもあると思うけど、でもネガティヴなものを欲していても、これを聴いた瞬間にスイッチが切り替わってポジティヴな方向に向かう、ある意味、突破口的な曲になればいいなっていう気持ちはあって。僕はあんまり落ち込まないけど、落ち込んでいるときにポジティヴな曲を聴いて“よっしゃ、頑張るか”って思えるような、要は笑顔を思い出す起爆剤になったらなと。
Q:ジャンクさん、落ち込まないんだ。
ジャンク フジヤマ:というか落ち込んでるヒマがない。そんなヒマがあったら改善する方法を見いだす時間に充てたほうが有意義だと思うんですよね。そもそもインディーズでCDを出すまでに常に落ち込み続けてきて、もう十二分に落ち込んでますから(笑)。あとはもう上がるだけ。前を向いて行けるとこまで行きましょうっていう。
Q:揺るぎないなあ。
ジャンク フジヤマ:ある程度の反省は必要でしょうけど、自分のやってきたことに対して自信を持って“これでいいんです!”って言えないと説得力がまったくない。やっていることに説得力を持たせるためには、まず自分を信じないと。自分の作るものを信じないとエネルギッシュなものはできあがってこないですよ。
Q:だから、この音楽が生まれてくるんだってわかった気がします。 こんなふうに衒いなく“愛”や“世界”や“未来”っていう言葉を歌うって、実のところなかなかできることじゃないだろうなと思いますし。
ジャンク フジヤマ:月並みな歌詞だとか言われたりもしますけどね(笑)。たしかに難しい言葉を使ってるわけではないけど、難しくする必要はないんですよ。だから子供でも聴いて歌えるし、歌って“面白い!”って言ってくれるんです。そこはやっぱり必要ですね、僕の音楽には。
Q:誰が聴いてもわかる、届く。ちなみにタイトルを「EGAO」とアルファベット表記にされた理由ってあるんでしょうか。
ジャンク フジヤマ:ぱっと見、目立つかなと(笑)。漢字で“笑顔”が使われてる曲タイトルはいっぱいあるけど、アルファベット表記することってあんまりないと思うんですよ。だったら、そっちのほうがいいかなっていうぐらい。僕、タイトルに関してはあんまり強いこだわりはないんです。たま〜にありますけど、そこに執着して頭でっかちになってしまうのはよくない。なので、より一般的で耳にポンと入ってくる言葉で、かつ長くならないようにしようと。
Q:たしかに目立ちます。どうしてアルファベット表記なんだろう? って思ったってことはそういうことですよね。
ジャンク フジヤマ:狙い通りです(笑)。
Q:どうすれば曲が届けられるか、あらゆるポイントで考えられてる。
ジャンク フジヤマ:せっかくたくさんの人が関わってくれて、僕自身も一生懸命作ってるものなので、だったらより多くの耳に届くように、こっちがしていかないとなって。
Q:カップリングの「Affection」がまたいい曲で。
ジャンク フジヤマ:これはもう自分のイメージするところのまさに“優しい愛”ですね。上っ面で愛だの恋だの言うのではなく、大きく包み込むような愛というか。そう思って、いい言葉を探してたんですよ。これこそはまさにこだわってつけたタイトルで。
Q:“Love”ではなかったんですね。
ジャンク フジヤマ:そう、もっと普遍的な愛を表現したくて。よく使われる言葉ではありますけど、このタイトルで全体の内容がこういう歌というのはたぶんないと思いますよ。
Q:歌詞もグッときます。ジャンクさん、案外ロマンチストだなと。
ジャンク フジヤマ:ふははははははは!
Q:そしてラストがライヴ音源での「この街〜meet again〜」。“この街”ってどこなんだろうなと思いながら聴きました。
ジャンク フジヤマ:もちろん自分にとっての“この街”もありますけど、聴いてくださってる方それぞれの故郷でもあって。“街”って歌ってますけど“村”を思い浮かべていただいても全然いいんです。ただ「この村」だと雰囲気がちょっと違うものになっちゃうんで(笑)。やっぱりシティポップス的イメージもありますし、僕の中ではモータウンっていうイメージで書いた曲なんですよ。でも、その景色の中には黒人はいなくて、日本人の街なんですけど。
Q:日本人である自分の目を通して見た風景。
ジャンク フジヤマ:そうです。日本人であるがゆえのジレンマで、ブラックミュージックが好きでも同じようにはできないじゃないですか。でも、僕が信じている音楽はやっぱりソウルなんですよね。しかも日本人のソウルっていう。
Q:日本人のソウル、ですか。
ジャンク フジヤマ:日本人っていろんなものを吸収して、自らのものに換えていくっていう生き方をしてますよね。もちろん、いいことばかりではないけど、戦後の焼け野原から立ち上がって、西洋文化も東洋文化も混在させながら自分たちの文化として作り上げてきたっていうのはやっぱり強いと思う。音楽もまさにそうで。だからあとは僕の技量次第。ポップス、もっと言えばJ-POPと呼ばれるものの中でいかにソウルを響かすことができるか。この先もそこを目指して作り続けていくだけ、鳴らし続けていくだけですね。
【取材・文/本間夕子】
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PROUD / EGAO【両A面シングル】
ジャンク フジヤマ
2012/09/26[single]
\1,200(税込)
VICL-36719
ビクターエンタテインメント