Dragon Ash

New single 「Run to the Sun/Walk with Dreams」 Now on sale!!

デビュー16年目に突入したDragon Ashが今、改めて掲げる最新にして普遍のロック・アティテュード。それがこのダブルAサイド・シングル「Run to the Sun/Walk with Dreams」だ。この4月に急逝したベーシスト・IKUZONEこと馬場育三のラストレコーディングでもあるこの2曲に止まず鳴り続ける意志を、消えず燃え盛る炎を、どうか全身で感じてほしい。

Q:予想以上にストレートで、ちょっと驚いたのですが、これは最初からそう意図しされてたんですか。

Kj:とりわけ意識したわけではないです。「Walk with Dreams」のほうが先にできたんですよ。なので8月にリリースしたベストアルバム『LOUD & PEACE』のアティテュードを引き継いだ、血湧き肉踊るアグレッシヴなものと包容力のあるものを、“Run”と“Walk”で表現して出そうとは決めていましたけど。

Q:この2曲はいつ頃できたんでしょう?

Kj:この年末年始ぐらいかな、俺がみんなに曲を出したのは。

桜井誠:4曲ぐらい持ってきた中で、この2曲はそんなに実験的な要素もなく、非常に入りやすい感じで。 

ATSUSHI:“「ROCK BAND」の次が勝負だ”って常々、Kjが言っていたので、どういうものが来るのか楽しみだったんですよ。そしたら思いっきりストレートな曲がきたので、いいなと。

DRI-V:「Run to the Sun」はストレートな豪速球、「Walk with Dreams」は曲の世界に入りこんで胸打たれる、そういう印象で。ホント毎回、新鮮さがありますね。

Q:これだけリリースを重ねてきてなお毎回、新鮮さが失われないってすごいです。今回で24枚目ですもんね。

Kj:24枚!? すげぇな!(一同爆笑) 初めて聞きました、それ。じゃあアルバムは何枚出してるんだろ。

Q:今のところオリジナルアルバムは9枚かな。

Kj:うわ、聞いてグッタリしちゃう(笑)。

Q:でも特に、今作はバンドのターニングポイントとなる作品ではないかと思うんです。

Kj:間違いなく一生忘れないでしょうね、このシングルのことは。この先もどんどん曲は作っていくだろうし、いろんなことをやっていくだろうけど、きっとこの2曲はシングル史上、もっとも忘れないだろうものでしょう。

Q:ちなみに制作はスムーズでした?

Kj:はい。普段よりも曲出しからレコーディングまでの時間があったので。俺ら、プリプロしないでいきなり録っちゃうんですよ。もちろん、その前に各自、曲に乗っけるアレンジについての話し合いはいっぱいしますけど。

Q:演奏にも勢いが溢れてますよね。初期衝動的というか……。

桜井誠:でも各々の演奏に関しても“こういうふうにしてほしい”っていう建志の意思がかなりあったので。例えばドラムでいえば“ここのオカズはこうじゃないとイヤだから、こう叩いてくれ”とか、かなりしっかりやり取りして録ったので、勢いというよりは建志のイメージ通りにちゃんと表現したという気持ちのほうが強いですね。実は緻密に計算されてる。

Kj:ま、それはこのシングルに限ったことではないけどね。ただ、今回は録る前に“15年やってきて、これからまたやるのであれば、音楽として、ロックとしてもう一個上の領域に行きたい”と、みんなにミーティングで話して。俺も俺なりに、今の音楽というものや俺たちなりのアティテュードを考えつつ曲を作っていきましたし。だから“ここがこう変化した”というよりは、全体ががちょっとずつ、これまでの一段上でやれてるんだったらいいかなと。

Q:そこで何をもって“一段上”とするのかも知りたいところです。

Kj:難しいよね、点数がつくわけでもないし。例えばセールスが一番なのであれば、世界一ウマいラーメンはカップラーメンってことになるけど、そういうことでもないし。何を美徳とするか、人によってのバランスでしょうね、そこは。でも切磋琢磨している以上、自分の中での勝ち負けは絶対にある。そういう意味では、俺は自分を満たすための行為をしてるわけだけど、結果的にそれが、みんなを満たすものになっていたら一番いいなとは思っていて。

Q:歌詞は両方とも最初の段階からついていたんですか。

Kj:はい、曲出しのときから。「Walk with Dreams」は以前、一緒に飲んでたときに友人が“実はこういう目標があるけど、やっぱり社会人だからそればっかりをやるわけにはいかないし、日々の労働に追われていて……”みたいな話を歩きながらしてて。それを聞いて俺が思ったことをそのまま曲にしたんですよ。だから足音をサンプリングしてたり。「Run to the Sun」に関しては、漫画『スラムダンク』の有名な台詞、“安西先生……バスケがしたいです”っていう、あの感じですね。あれの俺たち版。

Q:つまり“音楽がしたいです”“ロックがしたいです”という? 

Kj:そう。アーティストも16年やってくればもう生き方になるじゃないですか。人生の半分くらいやってきているわけで、そうなるとどう演奏するとか何を歌うとかじゃない、最終的には俺の人間性がそのまま鳴ってるっていうのが理想型だと思うんですよ。もちろんメンバーそれぞれに好きな音楽や好きな世界観があるので、そのすべてを一個の集団の中で表現するのは不可能だけど、でもDragon Ashにおいては7人……今は6人だけど、その塊自体が鳴ってるのが理想で。生きてる以上、絶対に変化も進化もする。それこそ年も食うし、ライフスタイルも変わっていくし。そういった変化や進化の中で、いかに音楽を生き方として鳴らしていけるか。今、そういうモードに入っていて。

Q:みなさんはこの2曲の歌詞に何を思われました? 

桜井誠:「Run to the Sun」は冒頭の“走らせてくれ”っていうひと言からいきなりキャッチーだし、言いたいことがストレートに伝わってきて。この言葉の置き加減はさすがだなと。

DRI-V:ホント、インパクトが強い。最初のイントロからこの歌い出しまでの、複雑なのに聴きやすいところが大好きなんですよ。ここで一気にテンションが上がって。

桜井誠:ま、たまに“この曲、サビってどこなの?”みたいな話にもなりますけど(笑)。明確なサビがないのにこれだけキャッチーな曲として成り立ってるのも素晴らしくて。

Q:むしろ、どの箇所もサビになりうる気も。

桜井誠:そうなんですよね。誰もがわかるポイントがあるようで、ないというか。“オマエ的にはそっちがサビなの?”みたいな(笑)。サビもなくて、ビートもあれだけ複雑で、なのに聴こえ方がストレートっていうのがDragon Ashらしい。

Kj:そうか、サビなかったな!(一同爆笑)

桜井誠:ま、あるっちゃあるんだけどね(笑)。でも人によっては刺さるポイントが全然違ったりするんだろうなって。「Walk with Dreams」は建志の口から発せられているような言葉遣いも多いし、誰が聴いても自分に置き換えやすい詞。きっと各々に奮い立つ瞬間はあると思うんですよ。それを歩くリズムで淡々と、だけど心の中では沸々と燃える……その表現の深さが素晴らしいと思います。

BOTS:実は俺、「Walk with Dreams」の“薄汚れたred wing shoes 泥だらけのtrecking boots”のくだりがちょっと引っかかってて。いつもは全然違う言葉ですごい韻を踏んでくるKjなのに、“red wing shoes”と“trecking boots”ってちょっとカブッてるんじゃないか? と(一同爆笑)。

Kj:ふはははははははははは!!!!!

BOTS:そこはちょっと“あれ?”って思った(笑)。

桜井誠:ま、そこは……ね(笑)。

Kj:オマエも思ってたんかい!(一同爆笑) 参ったな〜。

Q:ATSUSHIさんはどうですか、歌詞に関して。

ATSUSHI:じゃあ、踊りの側面から。すべてがそうだというわけではないですけど、言葉が持ってる力をさらに増幅して伝えるっていう役割が踊りにはひとつあるんじゃないかなと思っていて。俺、絶対に詞は読むんです。振り付けするときに詞から引っ張ってきて動きを考えたりすることも多くて。言葉を踊りに替えて視覚的にも伝えるというか……楽器にはアンプがあるじゃないですか。全部が全部そうではないけど、俺も踊りに関してはそういうイメージで踊ってるところはありますね。

Q:肉体が言葉の増幅装置。

ATSUSHI:それは人が自分の踊りを観て言ってくれたことなんですけどね。そういう意味で今回は2曲ともすごくストレートな言葉が使われているので、作りやすかったし、伝えやすかったです。

HIROKI:俺はみなさんと逆で歌詞は全然聴かないです(一同爆笑)。俺がロックを聴き始めた頃っていうのはもっと不親切だったんですよね。洋楽の場合、インディーでレコードを買うと歌詞カードが付いてなかったりするんで、ジャケットや音の感じから“きっと反戦的なことを歌ってるんだろうな”とか勝手な想像のもとに聴いていて。その癖がついてるから、たぶんKj→建志さんの歌やラップも音のひとつとして聴いちゃってるんですよね。そうしてパッと入ってきた言葉から勝手に想像するんです。で、5年後くらいになってちゃんと歌詞を理解したり。

Q:え、5年も!?

HIROKI:でも、それもひとつの楽しみじゃないかな。20年前ぐらいに聴いてたパンクバンドの曲も、最近になってちゃんとリリックを読んだら“へ〜、いいこと歌ってるな”って思ったり。音楽ってそういう楽しみ方をしてもいいと思うんですよね。

Kj:俺もそれ、あるかも。意識しないで聴いてた曲でも、あるとき歌詞を読んでみたら突然“ああ!”って思ったりするの。

Q:ところで今回のシングルでは2曲それぞれのリミックスも収録されていますが、この人選は馬場さんに縁のある方々ということで?

Kj:そうです。どうせだったら完全に記念碑みたいなものにしようよって。ファンもそうですけど、俺ら以外にも馬場さんへの想いが強い人はきっといっぱいいると思うし、いろんな人の想いで成り立ってる作品ほうがいいですからね。 

Q:しかも2曲それぞれ、実に対極的な仕上がりで。

Kj:本当に。「Run to the Sun"RockStar mix" Remix by I.N.A.(hide with spread Beaver)」ではベースをすごくフィーチャーして、ベースソングに仕上げてくれましたし、かたや「Walk with Dreams"Live On" Remix by Toshiya(DIR EN GREY)」はオリジナルにないサヴァイヴな面をめちゃくちゃ強調してくれて。

桜井誠:そういうところがリミックスの面白さですよね。せっかくやってもらうなら、ご本人たちそれぞれのカラーが出たほうがいいと思ってましたけど、まさにその通りの仕上がりで。2曲とも、お二人の濃さが出てるし、真剣に向き合ってリミックスしてくれたんだなって。

Q:それにしても15年超、Dragon Ashとして走ってこられて。先ほどKjさんがおっしゃったように、きっと変化も進化もされてるでしょうけれど、そうした中、この2曲のように、ごくシンプルに“夢”という言葉や“走っていきたい”という気持ちを歌える、その根っこにあるものはなんだろうって思うんですよね。“夢”という言葉の意味や、目指すものが変わってきたりはしないのかな、とか。

Kj:変わってないね。曲を作ってライヴをやって酒飲んで、また曲作ってライヴやって酒飲んで……っていう、これ自体が生き甲斐なわけ。どこに向かうのかが目的ではなくて、走ること自体がロックンロールっていう生き方だから。メジャーデビューして16年目で、まだ走りたいとか夢だのとか青臭いこと言えてるからたぶんやれてるんだろうし。そこで達観したらもう現場で通用しなくなると思うんだよね。

Q:現場?

Kj:ライヴハウスとかフェスとか。やっぱり対バンしたら俺らが一番盛り上げたいし、そこに対して真っ向から勝ちにいきたい。まだまだそう思ってるから呼んでもらえるんだろうし。

Q:常にガツガツと貪欲でいられてる。

Kj:今の時代性も俺にとってはすごくいいんだよね。アイドルばっかり、外国人ばっかりっていう中で、日本のバンドマンが提示すること、日本のバンドマンが優っていることは何かっていう。ジャンルにしてもそう。ポップスとかいろいろあるけど、ロックが優れてる部分は絶対にある。世の中って、ど真ん中なものだけが横行するじゃない? どっちに寄るのか/寄らないのかは人によって違うと思うんですよ。逆に俺らは一番端っこに行って、そこで鳴らし続けることによって、大きくいろんな人を照らすことはできないけど、細くてすごく強い光で一点を照らすことはできる。それが他の人からもサーチライトみたいに見えれば俺たちがやってる意味はあると思うし。

Q:世の大勢を照らしたいという欲求はないですか。

Kj:全然ないです。できる限り多くの人に聴いてもらいたいという想いはあるけど……それも何を美徳とするかだろうね。淡い光でより多くの人を包み込むように照らすのも、強い光で一部を強烈に照らすのも、それぞれにカッコいいと思うし。ただ、何万人規模のフェスに出ても、基本的に俺はモッシュピットのために歌ってる。その姿がシート敷いてのんびり観てる人たちの目にも“命削って、あんなうるさいことをやってる人たちがいるんだな”って映ったらそれでいい。たいしてMCもしないし、サービスがいいほうではけっしてないけど、俺たちには俺たちのあるべき姿、ストロングポイントが絶対あるから、ここまでやれてこれてるんだと思うし。

Q:そこはもう変わらないんでしょうね、これからも

Kj:このバンドである限りは。あとはひたすら志高く音楽をやるだけ。それ自体が目的だから。

Q:今回のシングルにもそうした志が息づいているんでしょうね。

Kj:うん。これが現時点、最新のDragon Ashの世界観なので、今はこの2曲を聴いてもらうことに全精力を傾けたいなと。

【取材・文/本間夕子】

Run to the Sun/Walk with Dreams【W-A SIDE SINGLE】DVD付き

Dragon Ash

2012/09/19[single]

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ビクターエンタテインメント

Run to the Sun/Walk with Dreams【W-A SIDE SINGLE】

Dragon Ash

2012/09/19[single]

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