持田香織

昨年15周年を迎えたEvery Little Thingの持田香織が、3rdソロ・アルバム『manu a manu』をリリース。ミト（クラムボン）、大橋トリオ、おおはた雄一など、敬愛するミュージシャンの手を借りて制作。人の温もりや触れ合いなど、日常から感じられる光が散りばめられた作品について、語ってくれました。

Ｑ：ソロ活動は、持田さんにとってどういう意味を持ちますか？

持田香織：ソロは勉強になることがたくさんあって、それを作品として出させていただけるのは、本当にぜいたくなことだと思っています。それに、ELTだけでは見えなかったものが見えて来ることも多いので、ソロでの経験は必ずELTに還って来るという手応えも感じています。ソロでは、ELTとは違うことをやろう！とか、意識的にやっている部分はありませんが、ふと側にあるような、生活の中に溶け込めそうなものや、そういう存在感を持ったものになったったら良いなと思っていつも制作していますね。

Ｑ：実際に今回完成してみて、どういうアルバムになったと思いますか？

持田香織：私個人の感覚としては、たとえば『雨は徒然に』という曲は、ちょっと昭和を感じさせるメロディーですが、突然ポンと出て来たもので、後で聴いて「こういうのを作りたかったし歌いたかったんだな」と気づいたり…。『State of mind』という曲では、ハウスサウンドをバックに英語で歌っているし…。今回は、いろいろなことにチャレンジしよう！という、前向きな気持ちがあったのかもしれないと改めて思いました。たくさんチャレンジした分、ライヴでやるのがすごく楽しみな作品になりましたね。

Ｑ：歌詞やサウンドからは、持田さんの持つ温かさとか優しさが伝わって来ました。特にラストの『夜明け』は、ちょっと泣ける雰囲気もありました。

持田香織：ありがとうございます。私も『夜明け』は、すごく好きな曲です。たとえば「ひたむきに日々をゆけばいいんだよ」という歌詞の後に、間奏が広がるのですが、その間奏の間にいろいろなことを思い巡らすことができる。それに太鼓の音は、アレンジャーの大谷（良介）くんが、大太鼓をドーンドーンと手で叩いてくれて。手で叩くという作業によってちょっとしたニュアンスが付いて、それで温もり感も増したと思いますね。

Ｑ：また、ミト（クラムボン）さんとの曲『めぐみ』は、すごく笑顔になれる曲。『めぐみ』という言葉の深さも感じました。

持田香織：これはCMありきの曲で、「種を育てる」というテーマがあって。それは本当にいいキーワードをいただいたと思います。そうやって、自分の中で何か育てて行けるものが増えて行けばすごくいいと思うし、それはずっと終わりのないことだと思うし。水をあげて愛情を注ぐということは、いくつになってもやって行けたら、すごいステキだなって思いました。

Ｑ：タイトルの『manu a manu』は、どういう意味ですか？

持田香織：マ行で始まる言葉がかわいいと思って(笑)。それでマニとかマノとか調べていたら、マノという言葉に手作りという意味があって、すごくステキだなと思ったんです。で、マノをマヌという発音にすると、ラテン語で「手から手へ」とか「手や手で」という意味の、タイトルの言葉があるということで。いろんな人が演奏してくれて、いろんな人の手が加わってでき上がった作品だし。それをまた、いろいろな人が手に取ってくれたらすごくうれしいなと思って付けました。

Ｑ：実際に何か育てたり、手作りしたりしていますか？

持田香織：していますよ。ローズマリーとかを育てているし、時間があればお料理も作ります。以前は陶芸にハマって、自分で作ったお茶碗やお皿でご飯を食べたりして、そういうちょっとしたことが、うれしかったです。やっぱり、何かを作ることが好きなんですよね。自分自身を一歩引いて見たりとか、自分のやりたかったことの再確認にもなります。そこに醍醐味があるし、新しい自分を知れる機会にもなりますしね。

Ｑ：DVD付きの盤には、5月に行われた「東京ホタル」というイベントでのライヴ映像や、『めぐみ』や『美しき麗しき日々』のミュージックビデオのメイキングを収録していますね。

持田香織：「東京ホタル」は、隅田川の上にステージを組んで歌いました。うしろを屋形船が浮かんでいたりとか、すごくステキなライヴになったのでぜひ観てほしいです。『めぐみ』のメイキングは、吊られていたり踊っていたり、どんな風に撮影されたのか分かるものになっているので、すごく面白いと思いますよ。

Ｑ：10月にはツアーを行うとのことで、どんなものになりそうですか？

持田香織：ステージで何かが生まれるんじゃないかと、すごく期待しています。きっと曲は知らなくても、自然とリズムに乗って身体を揺らしたくなると思うし、「何かわからないけど楽しい！」みたいな感じになると思うので、ぜひ足を運んでください。

Ｑ：ちなみに、ロンドン五輪が始まりましたが、注目している種目はありますか？

持田香織：私は水泳をやっているので、水泳とかシンクロが楽しみです。選手との交流はありませんが、知り合いがなでしこジャパンの澤さんとお仕事をされたという話を聞いて、勝手に親近感を沸かせています(笑)。それに澤さんが出ていたCMで、お母様が「あなたは私の誇りです」と語るシーンがあって、それを見たときすごく感動したんです。あれだけ注目を浴びることのプレッシャー、それに打ち勝って行く強さは、きっとすごくたくさんの人を勇気づけたことと思います。それには、家族や友人とか、支えてくれる人の存在が、すごく力になっているのだろうなとも感じました。私も音楽で、そんなことを伝えていけたら良いなと思っていて。まだぜんぜんだけど、自分が歌うことで、聴いてくれた人が「明日ちょっと頑張ろう」と少しでも思ってくれたら、すごくうれしいです。

≪ライヴ情報≫
●SLOW MUSIC SLOW LIVE’12
8月25日（土）東京・池上本門寺野外特設ステージ

●HAPPY MUSIC FESTA
9月9日（日）東京・恵比寿ザ・ガーデンホール

●若草山MUSIC FESTIVAL 2012
9月16日（日）奈良：若草山麓特設ステージ

≪持田香織 Concert Tour 2012 ～manu a manu～≫
10月13日 (土) 大阪・NHK 大阪ホール
10月17日（水）愛知・名古屋市芸術創造センター
10月27日（土）東京・神田共立講堂