Janne Da Arcのベーシスト・ka-yuによるソロプロジェクト、DAMIJAW(ダーミージョウ)。その名は映画『オーメン』に登場する悪魔の子供・DAMIEN、"JAW"は英語の"顎"に由来する造語であり、すなわちとてつもない強さとどうしようもない弱さを同時に宿した"不完全なものの象徴"を意味する。不完全だからこそ目指す理想に向かって進む、それがコンセプトだと彼はいう。そんなDAMIJAWが2年ぶりにリリースする2ndアルバムが『made from your heart』だ。昨年9月から3ヵ月間をかけて47都道府県、全50本のライヴを敢行したツアー"BE WITH YOU!!!!!"を経て生まれた今作についてka-yuの想いの核心に触れたい。
Q:今作を作るにあたってテーマはありましたか?
ka-yu:支えてくれるみんなと共有できるものが作れればという想いはありました。去年の47都道府県ツアーで強く感じたのが"僕はみんなに支えられて生きてるんだ"ということで。みんながいてくれるから僕はこうして音楽がやれてるんだって再確認できたんですよ。その想いをひとつの形にできたらいいなと。タイトル通り、まさに"made from your heart(あなたの心でできている)"なアルバムになりましたね。
Q:"支えられている"実感って具体的には?
ka-yu:僕自身は自分の音楽で誰かを支えてるとか、誰かのためになってるとかまったく考えたことがないんですよ。もちろん何かしらの役に立っていたらうれしいし、そうだといいなとは思いますけど、正直に言えばこのDAMIJAWというプロジェクトも僕は僕のためにやってるっていうのが前提にあって。でもツアーを回って、生まれて初めて訪れた土地とかホント久しぶりの場所、そういうところでも僕が来るのをずっと待っててくれたファンの人たちがいて、姿を見ただけで泣くほど喜んでくれたりしたんですよ。特に会話をしたわけではなくても、その涙の一粒にも、すごく想いが伝わってきて。
Q:ツアーを通じて感じたリアルな想いが"共有"というテーマとなってアルバム制作の原動力になったと。
ka-yu:はい。リアルに想いを感じ取れたり伝えたりできるのは、ライヴのあの空間しかない。今はインターネットとかも発達してますけど、やっぱり相手の顔を見て、相手の目を見て、空間を共有するっていうのがすごく重要だと僕は思ってて。そこで感じたもの、得たものが音楽にも反映されますし。
Q:なかでもラストを飾る2曲「BE WITH YOU~made from your heart mix~」「end of the sky・・・~出逢えなかった君へ~」には特にそれが凝縮されてる気がしました。"BE WITH YOU"は47都道府県ツアーのツアータイトルでもありましたよね?
ka-yu:そう、これはツアーのために作った曲で。47都道府県ツアーが決まってから"会いにいきます"っていう想いを歌詞にして持っていったんです。
Q:各会場、みんなで歌って。
ka-yu:そうなんです。みんなに歌ってもらって完成する曲ですって伝えて。1月に配信したバージョンには入ってなかったけど、このアルバムに収録されてるバージョンは47都道府県、50本の会場でみんなに歌ってもらった歌を全部使ってるんですよ。
Q:50公演分、全部!?
ka-yu:エンジニアさんはホント大変だったと思います(笑)。そのおかげでこんなに素敵な曲になって。"made from your heart mix"とあるように、この曲が今回のアルバムのテーマ、僕の想いとみんなの想いをいちばんわかりやすく表わしてるんじゃないかな。
Q:一方で「end of the sky・・・~出逢えなかった君へ~」には出逢えなかった人への想いが綴られていて。
ka-yu:ホントは「BE WITH YOU」で終わるほうがアルバムとしては美しいとは思うんですけど。でも "出会えたみんなの声で「BE WITH YOU」という曲は完成しました、ありがとう!"っていう気持ちがある一方で、いろんな事情で会うことができなかった人もいる。そういう現実も受け止めた上で、会えなかった君も、この空の下にいてくれたらきっと会いに行くよってことを伝えたかったんです。だから「BE WITH YOU」と「end of the sky・・・~出逢えなかった君へ~」で一対というか。僕自身、「BE WITH YOU」の精神を忘れないためにも最後はこの曲にしようと。
Q:すごく誠実ですよね。
ka-yu:でも、ここまで自分のこと以外を考えたり、いろんな想いを受け止められるようになったのはやっぱり47都道府県ツアーを回ったからこそだと思います。土地土地で待っててくれたみんなの想いを何のフィルターも通さずにしっかりと感じ取れて、みんながいるからこうやって音楽できるんだと心の底から思えて。その想いを形にして届けられる絶好のタイミングでありチャンスだったんですよね、このアルバムが。今までは僕、わりと自分が感じたことや想いがあっても、あえて口に出さなかったりしてたんですけど。
Q:それはなぜです?
ka-yu:いやもう、性格の問題でしょうね(笑)。だから、さんざん誤解を招いたり、相手にイヤな想いをさせたり傷つけたこともあるだろうし……。もちろん思っても伝えないことで、いいこともあれば良くないこともあるでしょうし、その見極めは難しいところなんですけど、今回に関しては、これはやっぱり伝えるべきだな、ここで伝えとかないとたぶん一生伝わらへん、って。
Q:そう思えたのってすごく大きいじゃないですか。
ka-yu:ねぇ? 年を重ねてちょっと素直になったんですかね(笑)。
Q:いいことです(笑)。ところで最初に"DAMIJAWというプロジェクトは自分のために始めた"とおっしゃいましたけど……。
ka-yu:DAMIJAWを始める前は正直、音楽との向き合い方が今とは違っていたと思うんです。もちろん当時は一生懸命やってたつもりだけど、今になってみると、まだまだ未熟だったかもなって。でも、DAMIJAWの前に本名"松本和之"名義でやっていたソロが終わってしばらく考える時間ができて、デビュー以来、初めてしっかり自分と向き合ったんですよね。いろいろ考えて、でも、やっぱりまだ音楽をやりたいっていう気持ちが消えなかった。だったらもう自分ができる限りのことを本当に死ぬ気でやってみようと思ったんですよ。そうしないとたぶん僕が目指すところにはいけない、自分が頑張らへんかったら誰が頑張るねんって。そこで"もういいや"みたいな諦めとかネガティブな気持ちじゃなく、すごく前向きな感情が出てきたのは大きかったですね。
Q:音楽の意味みたいなものも変わりました?
ka-yu:う~ん、何か変わったかなぁ……。
Q:例えば昔はただ弾いていれば楽しかったり、何かしら発散できればよかったものが、今は少し違うものになってきたとか。
ka-yu:たしかにそれはあるかもしれない。自分の歌に関しても、考え方が変わりましたね。もともと音楽への入口は楽器なので、自分の想いを口に出すってことが音楽ではなかなかなくて。本名でやってたソロのときも"俺はベーシストだから別に歌なんかうまくなくていいし、届けたい想いもない。歌は楽器の一部でいい"って割り切った考えでやってたんです。でもDAMIJAWを立ち上げようと思ったときに、やっぱり自分で歌詞を書くからには自分の想いをしっかり届けなきゃ、って。自分の一部を切り取って人に見せる、自分の想いを伝える……今は自分を見失わないための重要なものになってると思います、音楽が。
Q:音楽が自分の軸になったということでしょうか。
ka-yu:そうですね。前までは"別に音楽なんていつでも辞めてやるし"とか思ってた時期もありましたからね。生きていく上で必要なものではないし、これが一生の生業になるかというとそうじゃないと思ってたし。でも今はもう、その考えがないですね。逆に言うと、今の俺にはもうこれしかないからっていう。周りのみんながいてくれるからこそ、そう思えてるところはありますけど。
Q:お話を伺えば伺うほど、今、生まれるべくして生まれたアルバムなのだなと思います。さて、次のツアーも控えていますが、今回もかなりボリューム感のあるスケジュールですね。
ka-yu:そうですかね?……って50本経験したから麻痺してんねやろな、たぶん(笑)。
Q:ま、50本に比べれば(笑)。でも1ヵ月でこの本数はすごいですよ。
ka-yu:17本って多いんかな? 多いか(笑)。DAMIJAWのライヴはお客さんにも参加してもらってみんなで楽しい空間を作り上げていくものなので。だから気軽に"ちょっと遊びに行くか"みたいな感じできてくれたらうれしいですね。
【取材・文/本間夕子】
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made from your heart[CD+DVD]
DAMIJAW
2012/06/27[アルバム]
\3,780(税込み)
AVCD-32203/B
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made from your heart
DAMIJAW[CD]
2012/06/27[アルバム]
\3,000(税込み)
AVCD-32204