INTERVIEW

ウォン・カーウァイ監督

かのブルース・リー唯一の師、伝説の“グランド・マスター”葉問(イップ・マン)を筆頭とした、中国武術を極めた“宗師=グランド・マスター”たちの哀しみのバトルに席を立てないと大評判の『グランド・マスター』が公開中だが、その公開直前に来日を果たした名匠ウォン・カーウァイに直撃インタビュー! 「人生の価値観が激変するほどの映画になりました」と熱く解説するカーウァイ監督。これを読めば、アナタの人生も変わるぜ!

 

■人生がうまくいかない時、いかに頑張るか――そのテーマに人生が変わる想いです

Q:“人生が変わるほどの映画になった!”そうですね。具体的には、どう変わりましたか?

 

この映画を撮る前や準備中に感じたことですが、まず中国人の忍耐力を痛感しました。現在、中国の伝統武術は廃る傾向にありますが、それでも武術家たちは自分たちの伝統の技、心を次の世代の者へ伝えようとしています。一方、多くの映画において、誰それの成功物語が少なくない中で、イップ・マンのように人生が一番うまくいかないダメな時、いかに頑張るか、負けないで進めるかというテーマが、今回自分にとって大きく響いたことです。

 

Q:それにしても、ここまで美しいカンフー映画は観たことなく、またなかったと思います!

 

決して、美しく撮るという意識はなかったです。ただ、グランド・マスターの方々に会って技や型を見て、それがバランスよく、本当に美しかった。結局、武術の原理を追求して細かい指の動作などを撮っていくと、美しくなるものです。ただ、ダンスなどとは違い、繰り出す力は相当強く、原始的に申せば武器の一種だと思います。だから日本刀のようなもので、ダンスのように美しいわけではなく、武術として美しいと解釈してほしいですね。

 

■マイナス30度の中で2か月かけて撮影!! 初の武術映画は、工夫と苦労しかなかった

Q:武術映画という意味では、初めてのチャレンジですね。一番、苦労した点は、何ですか?

 

アクション映画は以前に撮ったことはありますが、確かに『グランド・マスター』は自分にとって初めての武術映画でした。特に一連のカンフーの動作の中で、今までのアクション映画と違うものを作るということで、工夫をしなければならず、特に今回は“各流派の違い”を1つ1つ忠実に、ハッキリと分かるように撮ったので、それは難しかったです。それと、イップ・マン演じるトニー・レオンが初登場する雨のシーンが、一番大変でした。

 

Q:オープニングの激闘ですね! 途方もない時間を費やしたと、ご本人も言っていました。

 

そうです。皆、トニーがいい俳優だということは分かっていますが、アクションが堪能かというと、武術を知らない、無理という先入観だと思います。それを払拭しなければいけない事なシーンだったので、そこだけは外せない、一番力が入ったシーンになりました。それと、チャン・ツィイーが登場する駅のシーンですね。これは東北に行って、実際にある古い駅を使いました。マイナス30度の中で2か月かけて撮ったので、本当に大変でした。

 

■“最後まで立っている”ためには、どうすればいいかを感じ取ってほしい――

Q:監督自身が感じたように、観る人の人生に多大な影響が出る映画になればいいですね!

 

この映画を観て、武術を始めようと思う人はいないでしょう(笑)。でも、まず本作で感じてほしいことは、本当の中国武術の姿、カンフーの姿を理解してほしいですね。現代では健康維持のためにカンフーをしている人が多いですが、本来の武器としての武術があります。映画なのでオーバーに演出していると思うかもしれないですが、そういうことじゃない。技術、武器、哲学、人生に対する態度、そういうものを劇中に感じ取ってほしいです。

 

Q:最初の話題じゃないですが、特に人生の苦難に直面している人に観てほしいですよね!

 

そうですね。(人生でさまなま困難に直面しても)“最後に立っている”ためには、どうすればいいか。その答えは、中国武術の考え方の中にあります。いかに困難を克服して、自我を残して“最後まで立っている”ためには、どうすればいいか。そういうことを、映画を観て感じてほしいです。しかし、いずれにしても、この映画は同世代の男性女性に関係なく、老若男女、オールマイティーで気に入っていただける映画だと思っておりますが(笑)。

 

■取材・構成・撮影/鴇田 崇(OFFICE NIAGARA)

 

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