ジェームズ・マクティーグ監督

Q:本作は、作家エドガー・アラン・ポーの最期の数日間をモチーフにした作品となっていますが、本作を製作するきっかけを教えていただけますか?もともとポーの文学作品はお好きだったのですか?

プロデューサーのアーロン・ライダーから話をもらったんだが、彼はこれまでにも『メメント』や『プレステージ』といった興味深い作品の数々を手掛けてきた人物で、個人的に注目していたんだ。僕自身、もともとポーのファンだったし、ポーの人生そのものと彼の作品が巧みに交差するストーリーにも大いに惹きつけられた。作品のほとんどが短編小説だったことや、彼の人生がかなり陰鬱で悲惨なものだったこともあって、ポーを題材にした映画の決定版、といったような作品がこれまでになかったという点でも意義あるチャレンジになると思ったし、彼の人生と物語を組み合わせて、今までにないユニークな映画が出来るんじゃないかと思ったんだ。

Q:THE RAVENはアメリカでは教科書にまで載っている有名な詩と聞きました。今回の映画タイトルをこの詩からとった理由を教えて下さい。「大鴉(The Raven)」の世界観などにこの映画が影響を受けているとしたらどんなところですか?

タイトルをあの詩からとったのは、この映画のスピリットを最も端的に表現していると思ったからだ。全編を通し鳥のモチーフが登場することでも、あの詩がもつ“ムード”のようなものを感じてもらえるはずだ。「大鴉」は彼の名前を聞けば誰もが真っ先に思い浮かべる1番の代表作だし、ポーのことをよく知らない人でも、タイトルを聞いて「そうか、エドガー・アラン・ポーの映画なんだな」といった具合に興味を惹かれて、劇場に足を運んでくれるんじゃないかという期待もあった。広く一般に知られた人物やキャラクターを一種の“ブランド”として売り込みに使う、というハリウッドの常套手段を、僕なりに試してみたというわけさ。

Q:「大鴉(The Raven)」の世界観などにこの映画が影響を受けているとしたらどんなところですか?

美と恐怖が巧みに混在するというのがポー作品の特徴だと思うんだけれど、この詩はまさにその最たる例だ。この映画でも、美しさ、愛、おぞましさ、といった一見対照的な要素が入り混じる彼独特の世界観を目指したつもりだよ。多種多様なジャンルがごちゃまぜになっているという点でも、この詩を含めたポーの作品と重なる部分があるんじゃないかな。時代の風潮を巧みにとらえた「大鴉」にはエンターテイメント的要素も大いにあるし、当時の大衆の間で人気を博したのも納得出来る。ポーは時代の気風を敏感に読み取って、人々が求めるエンターテイメントを提供するのに長けていたんだ。そんな彼に習って、この映画も今の観客に喜んでもらえるようなエンターテイメント作品に仕上げたつもりだ。

Q:最後に、日本で公開を楽しみしているファンへ本作品の見所とメッセージをお願いいたします。

日本の観客は僕がこれまで手掛けた作品も熱狂的に支持してくれたし、すごく感謝しているんだ。今までの作品とはちょっと毛色が違うとは言え、この映画にはホラーや心理スリラー、アクションといった日本で人気の高いジャンルの要素が詰まっているし、「落とし穴と振り子」をモチーフにした殺人などショッキングなシーンも含めたスリリングなストーリー展開に、日本の観客もきっと喜んでくれるはずだよ。