国際テロ捜査専門の諜報部隊である警視庁公安部外事課、通称“外事警察”の活躍を描く衝撃作
『外事警察 その男に騙されるな』。
2009年、一般的にはあまり知られておらず、“日本版CIA”や“裏の警察”とも言われ、触れることすらタブーと言われている裏の組織を題材にしたNHKのドラマ「外事警察」が話題を集めた。主人公は“公安の魔物”と呼ばれ、任務遂行のためなら非情な手段も辞さない住本健司。警察内部でも問題になり、追放されて姿をくらましていたのだが、日本での核テロの可能性が高まったため、呼び戻される。朝鮮半島から濃縮ウランが流出したという情報が入り、同時期に軍事機密データも消えてしまったというのだ。テロを阻止すべく、住本が動き出す。さらに韓国諜報機関NISも加わり、裏の裏を読む頭脳戦を繰り広げていく…という内容。
任務遂行のため、協力者(=スパイ)に取りこむと決めた人物のことを徹底的に調査して弱みを握り、精神的な揺さぶりをかけ、感情をコントロールして操っていく様に慄然とする。ターゲットにされたら誰も逃れる術はない。怖さも感じるが、スパイ大国と言われ、テロが起きたら何も出来ないだろうと言われている日本。北朝鮮の不穏な動きを始め、数々の不安材料がある中、“外事警察”の存在は心強い。
だが、決断力がなく迷走を続ける国のトップの連中に使いこなすことが出来るかどうかは疑問だ。いかに優秀な人員が揃っていたとしても、勝手に動くわけにはいかない。宝の持ち腐れにならなければ良いと願うばかりだ。テレビ版に続いて住本を演じるのは、渡部篤郎。辛い過去を背負いながらも国益を守るためには汚い手段も厭わず、心の奥は誰にも見せない孤高の男をクールに熱演。ソフトな雰囲気なだけに怖さを感じる。何が真実で何が嘘なのか…最後まで緊張感漲る骨太のドラマだ。
■津島令子(映画パーソナリティー)